研究課題/領域番号 |
16K21154
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
神林 直哉 大阪大学, 理学研究科, 助教 (50706752)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | イソシアニド / アセチレン / 交互挿入 / パラジウム錯体 |
研究実績の概要 |
イソシアニドは、遷移金属錯体の代表的な配位子であり、金属―炭素結合間への挿入反応ポリイソシアニドの合成が古くから行われてきたが、そのほとんどがイソシアニドの単独重合反応に限られる。本年度は、フェニルイソシアニドのオルト位にトリメチルエチニル基を有するモノマーを設計し、錯体反応レベルからイソシアニドとアセチレンの挿入反応を検討し、イソシアニドとアセチレンの交互挿入反応に基づく重合系の開発を行った。 設計したモノマーを用いて、イソシアニドとアセチレンのメチルパラジウム錯体への挿入速度に対するホスフィンの効果を調べた。モノマーを錯体に対して1当量反応させ1H、31P NMRにより追跡したところ、トリフェニルホスフィンを用いた場合に最も効率的に交互挿入反応が進行することを見出した。そこで、これらの結果を基に、Pd(PPh3)MeClに対して20当量のモノマーを反応させたところ、重合反応が進行した。SECにより精製することで、数平均分子量5500 (1.42) の高分子を収率58%で得た。高分子のIRスペクトル測定を行ったところ、アセチレンC≡Cの伸縮振動の吸収が大きく減少するとともに、イソシアニドとアセチレンの交互挿入結果形成されるインドール骨格に特徴的なC=N伸縮振動に帰属される吸収が強く観測されたことから交互挿入に基づく重合の進行が示唆された。また、吸収強度より見積もったアセチレンの挿入率は67%であった。本重合反応をイソシアニドと不飽和炭化水素の交互挿入に基づく、初めての重合例である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の予定通り、イソシアニドとアセチレンの交互挿入反応を錯体レベルで丁寧に検討することで、効率的な反応系を見出すことができた。また、それらを重合に応用することで、不完全ではあるが、イソシアニドとアセチレンの交互挿入に基づく重合にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、本年度の結果を基に、より効率的な重合系の開発、重合反応の制御を目指して行う。具体的には、アセチレンよりも反応性の高い置換基を用いることで、効率的な交互挿入反応の確率を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、本研究課題の受け入れ学生が少なかったことから、物品費を当初の予定よりもかなり抑える事ができた。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は、受け入れ学生の増員も決定している。また、研究が順調に進展していることから、物品費の増加が見込まれる。更に、より詳細な反応の追跡を行うために、低温で反応を行うことのできる、恒温槽等の機器の購入を予定している。今年度得られた成果は国際学会等で発表も計画している。
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