研究実績の概要 |
我々は昨年度までに、有機パラジウム錯体と反応させて、イソシアニドと不飽和炭化水素の交互挿入反応について錯体レベルでの研究を行ってきた。今年度は、これらの反応を詳細に調査することで、イソシアニドとアレンの連続挿入を伴う環化共重合反応を達成した。一方で、従来のイソシアニドを用いた重合系と比較して本系は、分子量および分子量分布の制御が難しく、完全な重合反応の制御には至っておらず、成長末端の構造も不明瞭であった。これらの原因として、単座ホスフィンを配位子として用いた場合、成長末端の反応性が非常に高く、成長反応を制御できないことが挙げられる。種々の検討の結果、パラジウム錯体の配位子として二座配位子であるビピリジンを用いた場合、分子量分布の狭い目的とする高分子(M n =10,000、M w /M n =1.06)が得られることを見いだした。さらにこの反応系では、開始剤であるパラジウム錯体とモノマーの仕込み比によって分子量を直線的に制御することができた。また、重合後の成長末端にキノリルメチルパラジウム錯体の存在が確認でき、重合後に再度モノマーを添加した場合も、狭い分子量分布を維持したまま分子量が増加した。以上の実験からこの反応がリビング重合性を有していることがわかった。反応解析の結果、本重合系では二座配位子の種類によって成長末端の反応性を制御することができ、リビング重合系の達成には配位子を適切に選択することが重要であることが明らかになった。
|