研究課題/領域番号 |
16K21156
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
信末 俊平 大阪大学, 基礎工学研究科, 特任助教(常勤) (80774661)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 構造有機化学 / 機能有機化学 / 外部刺激 / 動的変化 / 熱伝導 |
研究実績の概要 |
本計画の達成目標は、構造変化によって特性を変化する分子または構造体の特性を活かし、それらを構成単位とするソフトマテリアルの創出、および応力や光照射などの外部刺激に応答した固体状態での動的な物性の変換である。本年度は、1)柔軟なパイ共役骨格の構造変化に伴って蛍光特性の変化する分子を用いたソフトマテリアルの合成および応力に対する蛍光色の変化の解析、および2)物性変化のターゲットとして、近年注目を集めている熱伝導特性、つまり熱輸送に新たに着目し、その特性変化を調べるための測定系の構築を行った。前者については、配座変換に伴い蛍光色が変化する分子を高分子鎖に直接組み込み、応力によって分子構造が変化することで蛍光色が変化するエラストマーフィルムを開発した。これまでにも力によって色彩の変化する材料は報告されているが、それらはいずれも結合の開裂や会合状態の変化など不可逆な変化であったのに対し、配座変換を用いることで可逆かつ迅速な変化を観測することができた。今後、分子レベルなどの変化を調べることでより詳細な高分子内部の変化を調べることができると期待される。後者については、熱輸送のコントロールを目指す熱マネジメントを目標とし、その前段階として測定手法の確立に取り組んだ。3ω法と呼ばれる手法により基板上での薄膜の熱輸送の特性を調べた。今後この手法を用い、光などの外部刺激により構造変化が起きる高分子材料を用い、熱が流れないようにしたいときには断熱、流れるようにしたい時には高熱流束といった熱伝導特性のスイッチングを行うことで、省エネルギー技術の開発へ貢献できると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動的な特性変化として、配座変換に伴って蛍光色変化を起こす分子を導入した高分子フィルムの開発とその蛍光色変化、および熱輸送特性を調べるための測定系の確立を行った。前者に関しては、マクロな応力を分子の構造変化に伴う蛍光色変化という可逆かつ迅速なミクロな変化として観測できたという点では大きな成果である。後者に関しては、3ω法という手法を用い、基板上での薄膜の状態で熱輸送特性を測定した。実際には、有機無機ペロブスカイトを測定対象とし、非常に低い熱伝導度を示すことが明らかになった。今後は、目標として定めた熱輸送特性の変換に関する化合物の合成がやや遅れているため、その創出に取り組む。
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今後の研究の推進方策 |
熱輸送特性の動的変化を起こす材料の開発およびその実証を行うことを目的に、目的とする化合物または構造体の合成と、その固体状態もしくは薄膜での物性変化の解析の二段階での推進を行う。後者の測定に必要な測定手法については今年度に確立できたため、動的な物性変化を引き起こす化合物もしくは構造体の創出を行う。具体的には、高分子をはじめとするターゲットとなる化合物を精力的に合成し、その光もしくは磁場による熱輸送特性の変換にチャレンジする。
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