研究課題/領域番号 |
16K21157
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
後藤 知代 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60643682)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 水酸アパタイト / 光触媒 / 結晶形態 / 水熱 |
研究実績の概要 |
骨の無機成分として知られる水酸アパタイトは、生体親和性、有機物吸着特性、イオン交換特性を有するとともに、種々の陽陰イオンを結晶構造に置換することで新たな機能を付与できると期待される。また、これらの特性は結晶構造や形態により変化すると考えられ、これらの構造を制御することが重要である。本研究では、まず光触媒特性を有する酸化チタンナノ粒子を表面に担持したスポンジ状および針状結晶を有する水酸アパタイトを水熱合成し、有機分子の吸着と分解特性を調べた。紫外光照射下での色素の退色試験を行った結果、塩基性色素であるメチレンブルーでは針状結晶から成る試料がわずかに早い退色速度を示した。一方、酸性色素である酸性フクシンを用いた場合では、スポンジ状結晶から成る試料の方が明らかに退色速度は早くなった。吸着試験の結果から、スポンジ状の形態をもつ水酸アパタイトは針状試料よりもゼータ電位が正に近い値を示し、比表面積も大きくなることから酸性フクシンが試料表面に吸着しやすくなったと考えられる。さらにチタンを水酸アパタイト構造中へ置換する合成手法の検討として、リン酸三カルシウムとイソプロピルアルコールを用いたソルボサーマル法による合成も検討した。その結果、チタンは水酸アパタイト構造中よりも水酸アパタイト表面に酸化チタンナノ粒子として析出し、結晶構造中への置換は見られなかった。生成する水酸アパタイトは針状の形態を示し、イソプロピルアルコールの濃度により針のアスペクト比を変化させられることがわかった。得られた試料は紫外光照射下でメチレンブルーに対して明らかな退色反応を示した。これらの知見は、今後の合成手法および特性制御を検討する上で、有用であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度において、酸性色素の吸着特性における水酸アパタイトの結晶形態の効果について詳細に検討することができ、今後の特性制御のための材料設計の指針を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまで得られた知見を参考としつつ、水酸アパタイト構造中へのチタンおよび他の金属イオンの置換を試みるとともに、構造制御のための水熱法およびソルボサーマル法による合成手法の検討を進める。さらに、特性と水酸アパタイトの結晶構造および形態の関係性について引き続き評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題は、前年度まで支給を受けていた科研費(研究活動スタート支援)を発展させた研究テーマであり目的物質、使用試薬・器具類、合成手法および評価方法が類似している。今年度は、科研費(研究活動スタート支援)の繰越金を主に物品費に使用するとともに、研究を効率的に推進したことにより、当該科研費における物品費使用が大きく減少し次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、平成29年度請求額とあわせて、次年度に計画している合成手法および構造と特性制御に関する研究の遂行および成果報告に使用する予定である。
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