ハイドロキシアパタイト(HAp)はリン酸カルシウムの一種であり、特異な有機物吸着特性を有する。HApの吸着特性は、結晶形態や構造、露出する結晶面に依存すると考えられる。水熱法などの合成手法により結晶形態を制御することができれば、種々の吸着剤や触媒材料としての高機能化や特性の選択性の付与が可能となると期待される。本研究では、浄化材料や触媒担体としての応用を目的として、遷移金属イオンの構造中への置換を試みるとともに、酸化物との複合化による光触媒材料の合成と、結晶形態、サイズを変化させることで吸着特性の制御を試みた。 平成28年~29年度は、遷移金属としてチタン(Ti)を選択し、キレート剤添加や尿素分解法によるHAp構造中への遷移金属導入を試みた。その結果、HAp構造中へTiは入らずTiO2ナノ粒子としてHAp結晶状に担持された複合体を得た。HAp形態を作り分けることで、ゼータ電位と比表面積の違いにより酸性・塩基性色素に対する吸着特性と光触媒反応による退色速度が変化することを見出した。また平成29年~30年度、ソルボサーマル合成によりTiO2ナノ粒子が担持した針状HAp結晶を合成し、酸性および塩基性色素の退色試験と吸着試験を行った。針状HApの場合、結晶のアスペクト比によりゼータ電位を変化させることで酸性色素の吸着量を制御できることを明らかにした。さらに最終年度では、TiのHAp構造中への取り込みを調べるため合成試料に対して放射光分析等の構造評価を行った。
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