| 研究課題/領域番号 |
16K21160
|
|---|
| 研究機関 | 神戸大学 |
|---|
研究代表者 |
松本 拓也 神戸大学, 工学研究科, 助教 (70758078)
|
|---|
| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
| キーワード | 高分子合成 / 表面物性 / 疎水性 / 親水性 / ブロック共重合体 / 薄膜構造 |
|---|
| 研究実績の概要 |
これまでのビニル系高分子では，困難であった高い側鎖密度を，本研究での対象となるポリイリデン酸エステルでは容易に達成できることから，従来以上の側鎖効果や主鎖の剛直性を活かした機能・性能が期待できる。前年度までに，高分子量を有するポリイリデン酸エチルの合成を達成するとともに，側鎖にパーフルオロ基を有するポリイリデン酸エステルや側鎖のエステル部位を加水分解したポリイリデン酸の合成を行い，それらの表面物性を明らかにしてきた。結果，側鎖にエチルエステルを有するものでは，側鎖に運動の制限による低い表面自由エネルギーが確認でき，さらにパーフルオロ基を有する高分子では，同じ側鎖を持つ従来のビニル基では達成困難であった10ｍJ/m2以下の低い表面自由エネルギーを達成している。さらに，加水分解をした高分子では，対応するポリアクリル酸をはるかに凌ぐ，高い表面自由エネルギーを有することを解明した。
今年度では，まずパーフルオロ基を有する高分子のブロック共重合化に着手した。結果，エチルエステル基とパーフルオロアルキル基を９：１の割合で有するポリイリデン酸エステル共重合体の合成に成功した。また，同じ組成比を有するランダム共重合体も同時に合成し，表面物性を評価したところ，ブロック共重合体の方が低い表面自由エネルギ―を有することが確認できた。これにより，ブロック共重合体では，パーフルオロアルキル基のセグメント部分が薄膜の表面に偏析していることが明らかとなった。
|
| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度にパーフルオロ基やカルボン酸を有する高分子の合成に成功したことから，より効率的に側鎖効果を発現するために，ブロック共重合体の合成に取り組んだ。パーフルオロアルキルエステルを疎水ユニットとして，さらに汎用有機溶媒への溶解性付与のためにエチルエステル基を別のセグメントとして設計した。組成としては，パーフルオロ基の溶解性が乏しいことから，パーフルオロ基とカルボキシ基の比率が１：９となるように，ブロック高重合体とランダム共重合体を合成した。また，そのブロック性を評価するために，重合過程における合成されていく高分子の組成比や分子量を逐次追跡した。結果，先にエチルエステル部のセグメントを重合し，パーフルオロアルキル基のモノマーを添加したところ，添加後に重合度が徐々に増加するとともに，組成比においてもパーフルオロアルキル基部分の比率がそれに対応して増加していくことが確認できた。得られたそれぞれの高分子から薄膜を作製し，その表面自由エネルギーを評価したところ，ブロック共重合体の方が，低い表面自由エネルギーを示すことが確認でき，パーフルオロアルキル基の表面偏析が，ブロック共重合体の方がより顕著に起きていることが強く示唆された。
以上のことから，計画以上に進展したと判断した。
|
| 今後の研究の推進方策 |
今後は，側鎖にカルボン酸を有するポリイリデン酸に着目し，各種カチオンとのイオン会合性能や，水分子と側鎖の相互作用の解明・さらにはその高分子の界面活性能や水の不凍性付与効果についても評価を進める。
さらに，来年度が最終年度となるため，国際学術論文誌への論文投稿や国内外の学術会議においてこれまで以上に積極的に参加し，発表していく。
|
