最終年度となる平成30年度は,高速・高発熱反応であるシュードイオノンからβ-イオノンへの環化をモデル反応とし,μOBRを使った反応速度解析を行った.また,高速度カメラを用いて流動の可視化を行い,混合の様子を観察した.さらに,反応速度解析の結果及び測定した混合時間を基に,混合ダムケラー数Da_mixを定義し,反応速度と混合速度の評価を行った. 流動可視化用に透明アクリルプレートを切削してμOBRを作製した.水を満たした流路にローダミンBの着色水溶液をステップ的に流入させ,高速度カメラによって混合の様子を撮影した.バッフル区画の中心領域について,フレーム毎の撮影画像を切り取り,並べることによって混合の時空間パターンを形成させた.振動レイノルズ数を大きくすると,流路径方向への混合及び押出し流れ性能が向上していることが観察できた.次に,シュードイオノンの環化反応を,μOBRを用いて行った.滞留時間を変化させ,各種濃度を反応機構モデルに対してフィッティングし,反応速度定数を求めた.計算値と実験値は十分一致した.本研究で測定した速度定数と,スラグフローを応用した先行研究の解析結果を比較すると,本研究で求めた反応速度定数の方がいずれも大きい値であった.反応器の混合速度が反応解析結果に与える影響を定量的に評価するため,混合ダムケラー数Da_mixを定義したところ,先行研究の解析では0.21 - 25.2であり,μOBRでは0.017 - 1.47を示した.μOBRの方が小さな値を示しており,正確な反応速度解析結果を与えたといえる.また,アレニウスプロットを行うことで,反応ネットワーク上で最も大きな活性化エネルギーを持つ経路が変わることがわかり,マイクロチャネル内の混合方法を改善することで反応の選択性が変わることがわかった.
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