平成30年度は、これまでの悉皆的な占領期(1945-1952年)の神戸基地に関する資料収集と研究発表の成果を踏まえて、さらなる分析・検討と地域社会への還元を目指した。また、研究成果公開促進費を得て、本研究課題の成果も含む『神戸 闇市からの復興――占領下にせめぎあう都市空間』(慶應義塾大学出版会、2018年)を刊行した。 本研究課題の成果をもとに「新長田下町芸術祭」の関連講義「近現代神戸の都市史に見る下町エリア」や、戦後神戸の都市開発について年表の作成、1995年の阪神・淡路大震災の震災復興再開発に言及する論考を『建築雑誌』に執筆する等、占領下から現在に至る神戸の都市空間への視座を提示した。占領下神戸の映画興行の再建と占領についても調査を進め、共著の書籍への原稿として執筆した。 占領期の神戸に暮らした地域住民へのヒアリング調査を行った成果の社会還元として前年度末に実施した、デザイン・クリエイティブセンター神戸との協働企画「神戸スタディーズ#6 "KOBE"を語る―GHQと神戸のまち」の成果冊子を作成した。さらにその展開として、ヒアリング内容や収集した資料や論考を用いて企画監修した展示をデザイン・クリエイティブセンター神戸で開催、写真収集家の協力を得てスライドトークも実施した。 主として占領期の前半にあたる1945年から1949年頃の神戸基地に関する占領軍の駐留実態や地域住民との関係についての調査成果をまとめ、論文や展示等アウトリーチとして発表した。なお、今後の研究の展開として、占領後期から神戸基地周辺にも影響を及ぼした朝鮮戦争と阪神間の都市形成の関係の解明を想定している。
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