研究課題/領域番号 |
16K21169
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
上沼 睦典 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (20549092)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 熱伝導率 / ナノ構造 / 球殻状タンパク質 |
研究実績の概要 |
有機無機複合ナノ構造を利用した熱伝導率制御を目的とし、タンパク質を利用した無機材料へのナノ空孔または低熱伝導率のナノ領域形成を実施した。特に、球殻状タンパク質(フェリチン)の分散配置制御技術とその配置技術を用いて作製した無機薄膜の熱伝導率低減効果を研究した。 熱伝導率測定では、異種材料界面や結晶粒界などにより熱伝導率が変化する。本研究では無機材料の結晶粒界による影響を除去するためアモルファス構造を持つ材料に対し、ナノ粒子を導入し熱伝導率低減効果を検討した。アモルファス無機材料には、これまでに研究実績があるシリコン酸化物を用い、タンパク質に対し低ダメージである蒸着法により成膜した。また、ナノ構造には、ポリエチレングリコール修飾した酸化鉄コアフェリチンを利用して、2層、3層、5層の分散積層構造を無機薄膜中へ形成した。形成したナノ構造については、透過型電子顕微鏡による断面観察を実施した結果、シリコン酸化物中へタンパク質ナノ領域が分散配置されているナノ構造が確認され、目的の構造が形成されていることを確認した。 有機無機複合ナノ構造薄膜に対し3オメガ法により熱伝導率を評価した結果、フェリチンと酸化鉄ナノ粒子複合構造を埋め込んだ薄膜において、熱伝導率の低減を実現した。この熱伝導率低減は、低熱伝導率であるタンパク質と無機材料の界面フォノン散乱効果および周期的構造によるフォノンブロッキング効果が関連していることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
無機材料の成膜方法やフェリチンへのPEG修飾方法の改善により、有機無機複合ナノ構造の形成に成功しており、ナノ構造埋め込み無機薄膜の断面構造はTEMにより確認している。また、熱伝導率の評価や解析についても順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
局所的低熱伝導率領域を含んだ薄膜の界面熱抵抗測定を行い、ナノ構造領域の影響をさらに詳細に調査する。また、これまで利用してきたナノ構造形成方法を熱電材料として利用可能な無機材料へ適用し、電気的特性へ与える効果についても明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、高真空中での測定を想定し設備備品を購入予定であったが、簡易真空状態でも測定可能であることが明らかとなったため一部の備品の購入をやめた事や、研究が順調に進み実験に利用する高額な基板の使用枚数や特殊なタンパク質の使用量を節約することができたため次年度の使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の予定より実験が順調に進み研究成果が出てきているため、次年度では成果発表のための学会参加費や旅費に利用する。
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