本研究は、有機無機複合ナノ構造を利用した熱伝導率制御を目的とし、ナノ粒子の分散配置制御技術とその配置技術を用いて作製した無機薄膜の熱伝導率低減効果を研究した。特にフェリチンタンパク質を利用した無機材料へのナノ空孔形成を行い、以下の成果を得た。 ナノ粒子形成材料としてフェリチンタンパク質を用い、タンパク質表面にポリエチレングリコール(PEG)を修飾することでナノ粒子の分散配置を実現した。またPEGフェリチンを用い基板上にスピンコーティングすることでナノ粒子の分散配置を実現した。ナノ粒子の分散距離とPEGの分子量との間に相関関係があることを示し、PEGによる物理反発が均一なナノ粒子分散に影響していることを示した。 上記のナノ粒子分散技術を踏まえ、粒界の影響を除去するためアモルファス構造を持つ材料に対し、ナノ粒子を導入し熱伝導率低減効果を検討した。アモルファス材料にはSiO2を用い、酸化鉄コアPEGフェリチンの分散構造を導入した。TEMによる断面構造の観察から、SiO2と酸化鉄ナノ粒子の間にタンパク質の低熱伝導率層が残存していることを確認した。3ω法により熱伝導率を評価した結果、フェリチンタンパク質と酸化鉄ナノ粒子複合構造を埋め込んだ薄膜において熱伝導率の低減を実現した。この熱伝導率低減は、低熱伝導率であるタンパク質と無機材料の界面フォノン散乱効果および周期的構造による自由行程が長いフォノンに対してのブロッキング効果が関連していることを示した。さらに、アモルファス材料として熱電応用の可能性があるInGaZnOについての検討を実施した。
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