研究課題/領域番号 |
16K21173
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
伊澤 正一郎 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (30572599)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 甲状腺乳頭癌 / 自己抗体 / エピトープマッピング / WD repeat domain 1 / Fibronectin 1 |
研究実績の概要 |
1. 高純度合成ペプチドを用いた新規エピトープ決定 平成28年度の研究成果をもとに絞り込みを行ったWD repead domain 1 (WDR1) およびFibronectin 1 (FN1) に由来するペプチドについて少数の甲状腺癌患者血清、良性甲状腺腫瘍患者血清、健康な人の血清を用いて甲状腺癌特異的自己抗体の検出能を検討した。その結果、WDR1およびFN1に含まれるアミノ酸配列から構成される12アミノ酸からなるペプチドライブラリーにおいて、21種類のペプチドが抗WDR1抗体およびFN1抗体の検出が、特に予後不良の甲状腺癌である未分化癌や進行甲状腺乳頭癌 (StageⅡ以上)において有用である可能性が示唆された。またアッセイに関わる試薬濃度や血清希釈率、温度設定を詳細に検討し、ELISAを用いた抗体価の測定に最も適した条件を決定した。 2. 癌特異的自己抗体の検出に優れる合成ペプチドの決定 1. の知見を踏まえ、新たに予後不良の甲状腺癌、StageⅠの甲状腺癌、良性甲状腺腫瘍、バセドウ病や慢性甲状腺炎を含む自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺疾患を有さない健康な人が参加する臨床研究を本学の倫理委員会へ申請し、平成29年9月に承認を得た。同月より患者登録を開始し、診断時の各種臨床指標との対比を含む横断的評価により、検討対象の21ペプチドのうち少なくとも10ペプチドは抗WDR1抗体、抗FN1抗体による予後不良の甲状腺癌の診断において有用であることを確認した。 3. 特許出願 1.および2. の知見を踏まえ、平成30年3月に国内主要特許の出願を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
12アミノ酸からなる抗体検出に優れたペプチドの決定に必要な患者登録に関連する臨床研究開始は、個人情報保護法の改正により研究計画書の修正や審査に予想以上の時間を要したため遅延した。そのため、国内特許出願の対象とすべきペプチドの決定が2018年2月にずれ込み、出願も2018年3月となった。従って研究で得られた知見を活用して簡便に抗体価の測定を行うELISAキットの作成に着手できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1. 予後不良の甲状腺癌を検出する血清中自己抗体検出システムの構築 平成29年度までに終了している10ペプチドの評価に加え、平成30年4月に完了を予定している11ペプチドの解析結果を踏まえ、ELISAキットをはじめとする検出システムの運用に必要な知見を確定する。さらに2018年3月に出願した国内主要特許の出願内容を活用して、多数の検体を短時間で処理可能なキットの開発を行う。 2. 知的財産の運用 海外での特許出願を目指し、1. の共同開発企業などの開拓ならびに交渉を行う。 3. 甲状腺癌特異的自己抗体の産生機序解明 WDR1およびFN-1の立体構造を解析することで、これまでに特定した合成ペプチドに含まれるアミノ酸配列が自己抗体の産生においてどのように寄与するかを検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
多数の患者検体を用いた解析を開始するための新たな臨床研究を開始するにあたり、個人情報保護法を踏まえた倫理指針に従った審査が必要となり、予想以上の時間を要した。そのため甲状腺癌特異的自己抗体を検出するために使用する合成ペプチドの絞り込みが遅延し、自己抗体産生機序に関わる検討の開始が困難であった。 平成30年度においては、解析を終了していない合成ペプチドの意義を確定し、蛋白立体構造との関連から自己抗体産生メカニズムに関する検証を行う。
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