放射性廃棄物地下処分に関する研究は重要度が高いが,天然および人工バリア材や埋戻し材(ベントナイト系材料)に含まれる粘土鉱物の種類や含有量,さらに,超長期供用による粘土鉱物の変質については十分な検討がなされていない.特に,複雑な地質環境を有する我が国にとって,「粘土鉱物」に着目することは非常に重要である.本研究は,粘土鉱物を含む岩質材料(天然バリアを想定)と,1種の粘土鉱物および変質鉱物を様々な割合で含むベントナイト系材料(人工バリアを想定)の力学特性に及ぼす粘土鉱物の種類の影響について実験的に検討した.特に粘土鉱物を含む岩質材料では一軸圧縮強度について,粘土鉱物およびベントナイト系材料では膨潤圧・透水特性について検討した. 平成30年度は,1種の粘土鉱物のみから構成される供試体と,ベントナイト系材料に対して,超長期供用による変質を想定して,KOH溶液またはCa(OH)2溶液に浸漬させ変質反応促進を施したベントナイトを様々な割合で混合した供試体を用いて,一次元膨潤圧試験および透水試験を実施し,ベントナイト系材料の膨潤特性および透水性に与える変質鉱物置換率(変質)の影響について検討した.得られた知見を以下に示す. 膨潤圧と透水係数は粘土鉱物の種類や浸漬させた溶液の種類によって異なり,特に,ベントナイトの変質によって生成されると考えられるカオリナイト,雲母粘土鉱物および緑泥石,さらに,KOH溶液浸漬ベントナイトの透水係数は,ベントナイトの透水係数よりも約3~5桁大きい.これは,変質や,それに伴う変質鉱物(特に粘土鉱物)の増加は,ベントナイト系材料の透水性に影響を与える恐れがあることを示唆するものである.また,ベントナイト系材料を用いる場合,カルシウムイオンの他に,カリウムイオンの存在にも十分注意する必要があることが実験から明らかとなった.
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