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2016 年度 実施状況報告書

膵がんに対するアディポネクチン受容体アゴニストの抗腫瘍効果の解析

研究課題

研究課題/領域番号 16K21177
研究機関島根大学

研究代表者

秋元 美穂  島根大学, 医学部, 助教 (60437556)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード細胞死 / ROS / カルシウム
研究実績の概要

当該年度ではヒト膵がん細胞に対するAdipoRon誘導性の細胞死の分子機序について検討し、以下について明らかにした。
①AdipoRon処理をしたヒト膵がん細胞株(MIAPaCa-2およびPanc-1)ではAnnexin V+PI+の細胞集団の増加を認めたが、Caspase-3および-9の活性やアポトーシス関連タンパク質の変動は確認されず、非アポトーシス性の細胞死が誘導されることが示唆された。さらにAdipoRon 誘導性の細胞死はネクロトーシス阻害剤(Nec-1)およびオートファジー阻害剤(Chloroquine)により抑制されたことから非典型的な細胞死であると考えられた。
②MIAPaCa-2細胞ではAdipoRon 処理に伴いAdipoR1下流のAMPKのリン酸化と共にMAPK、ERKシグナルの活性化が認められた。また、AdipoRon誘導性の細胞死はMEK/ERK阻害剤やsiRNAによる AdipoR1の発現抑制により著しく阻害されたが、AdipoR2の発現抑制では大きな影響を受けなかった。したがって、AdipoRonはAdipoR1を介してMAPK、ERKシグナル依存的にMIAPaCa-2細胞の細胞死を誘導すると考えられた。
③AdipoRon処理をしたMIAPaCa-2細胞ではミトコンドリア由来のスーパーオキシド(mtROS)の増加に先立ち、細胞内Ca2+濃度が上昇することを新たに見出した。Ca2+蛍光プローブを用いた共焦点レーザー顕微鏡下での観察では、特にミトコンドリアへのカルシウムの蓄積が顕著であった。Ru360によりミトコンドリアへのCa2+の取り込みを阻害するとmtROSレベルの上昇およびAdipoRon誘導性の細胞死が阻害されたことから、AdipoRonはミトコンドリアへのCa2+の蓄積を介してmtROSレベルを上昇させ、細胞死を誘導することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画通り、AdipoRon誘導性の細胞死の分子機序について解明を進めた。またその過程で、ミトコンドリアへのCa2+の蓄積がAdipoRonによる細胞死の引き金となることを新たに見出した。今後はこの結果も併せてAdipoRon誘導性の細胞死の分子機序の詳細を明らかにする必要がある。

今後の研究の推進方策

これまでの研究から得られた結果を併せ、AdipoRon誘導性の細胞死の分子機序をさらに詳細に解明すると共に、以下の項目について研究を進め、腫瘍増殖抑制効果および転移抑制効果をin vivo で検討する予定である。
①膵がん担がんマウスにおけるAdipoRonの腫瘍増殖抑制効果および転移抑制効果の検討:ヒト膵がん細胞株(MIAPaCa-2)あるいはマウス膵がん細胞株(Panc-02)を同所移植または皮下移植した担がんマウスにAdipoRonを経口投与し、腫瘍増殖および転移(肺あるいは肝)に対するAdipoRonの影響をin vivoで評価する。
②AdipoRon投与が浸潤・転移に及ぼす影響の検討:膵がん担がんマウスでAdipoRon投与による転移抑制効果が確認できた場合、AdipoRonが膵がん細胞の浸潤能や上皮‐間葉移行(EMT)に及ぼす影響をin vitroで検討する。AdipoRonが腫瘍細胞だけでなくがん間質細胞に作用して転移抑制効果を示す可能性も考慮し、上記①の腫瘍から抽出したRNAを用いて浸潤・転移に関連する遺伝子の発現量を定量PCRで調べる。AdipoRon 投与群と非投与群の間で発現量に差があるものについては、組織切片を免疫蛍光染色してタンパク質レベルで発現を確認するとともに、どの細胞が発現しているかを特定し、腫瘍組織中のAdipoRonの標的細胞を明らかにする。
③ AdipoRonが腫瘍組織中の間質細胞に及ぼす影響の解析:がん間質細胞の中でも特にAdipoRを発現している細胞(血管内皮細胞、マクロファージ、樹状細胞、T細胞など)に着目し、①で得られた腫瘍を材料として腫瘍血管密度、マクロファージの極性変化、樹状細胞およびT細胞の活性などをAdipoRon 投与群と非投与群の間で比較することで、AdipoRonの投与が腫瘍組織中の間質細胞に及ぼす影響を検討する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Interleukin-33 enhances programmed oncosis of ST2L-positive low-metastatic cells in the tumour microenvironment of lung cancer.2016

    • 著者名/発表者名
      Akimoto M, Hayashi JI, Nakae S, Saito H, Takenaga K.
    • 雑誌名

      Cell Death&Diseases

      巻: 7 ページ: e2057

    • DOI

      10.1038/cddis.2015.418.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Soluble IL-33 receptor sST2 inhibits colorectal cancer malignant growth by modifying the tumour microenvironment.2016

    • 著者名/発表者名
      Akimoto M, Maruyama R, Takamaru H, Ochiya T, Takenaga K.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 7 ページ: 13589

    • DOI

      10.1038/ncomms13589.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 可溶性ST2は炎症性のがん微小環境の修飾を介して大腸がんの増殖および転移を抑制する2016

    • 著者名/発表者名
      秋元美穂、丸山理留敬、竹永啓三
    • 学会等名
      第14回がんとハイポキシア研究会
    • 発表場所
      岐阜グランドホテル(岐阜)
    • 年月日
      2016-11-04 – 2016-11-05
  • [学会発表] Nuclear localization of lactate transporter MCT4 could be a predictor of metastatsis regulated by mtDNA mutation.2016

    • 著者名/発表者名
      Koshikawa N, Akimoto M, Ueda T, Iizasa T, Nebeya Y, Iuchi T, Nagase H, Takenaga K.
    • 学会等名
      第14回がんとハイポキシア研究会
    • 発表場所
      岐阜グランドホテル(岐阜)
    • 年月日
      2016-11-04 – 2016-11-05
  • [学会発表] mtDNA変異が制御する転移の予測因子としての乳酸トランスポーターMCT4の核局在2016

    • 著者名/発表者名
      越川信子、秋元美穂、植田健、飯笹俊彦、鍋谷圭宏、井内俊彦、永瀬浩喜、竹永啓三
    • 学会等名
      第75回日本癌学会総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
    • 年月日
      2016-10-06 – 2016-10-08
  • [学会発表] 可溶性IL-33受容体sST2は大腸がん同所移植モデルにおいて腫瘍増殖および肝転移を抑制する2016

    • 著者名/発表者名
      秋元美穂、竹永啓三
    • 学会等名
      第75回日本癌学会総会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(横浜)
    • 年月日
      2016-10-06 – 2016-10-08
  • [学会発表] IL-33はprogrammed oncosis耐性高転移性肺癌細胞をがん微小環境下において選別する2016

    • 著者名/発表者名
      秋元美穂、竹永啓三
    • 学会等名
      第25回日本がん転移学会
    • 発表場所
      米子コンベンションセンター(米子)
    • 年月日
      2016-07-21 – 2016-07-22

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公開日: 2018-01-16  

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