研究課題
本年度はリーキーガットシンドローム(LGS)を呈する動物モデルの確立と、LGSを適切に評価しうるプローブの探索および評価を目的として研究を行った。平均分子量4000のFITC標識dextran(既存プローブ)を経口投与したマウスにおいて腸粘膜血流を遮断/再灌流させて腸粘膜障害を誘発したところ、同プローブは腸粘膜より顕著に吸収され、全身循環への移行することが確認できた。これをLGSモデルとして同等分子量の新規プローブ候補物質(健康食品として流通)を用いて同様の検討を行ったところ、既存プローブと同等量が全身循環に移行した。また、虚血再灌流の時間を変え、腸粘膜障害の程度が軽度、中等度、重度のモデルを作成し同様の検討を行ったところ、新規プローブの吸収量は重症度に応じて増大した。さらに新規プローブと同一組成で分子量が種々異なるものを用いて同様の検討を行ったところ、分子量が増大するにつれて吸収量は減少した。一方、非ステロイド性消炎薬とある薬剤を投与することで、腸粘膜の虚血再灌流よりも軽度のLGSを誘発するモデルを作成し、同様の検討を行ったところ、低分子量のプローブを投与した群のみで吸収が認められた。以上、本年度はLGSを呈する2種類のマウスモデルを作成し、それを用いて新規プローブが既存プローブに比して遜色なく腸粘膜の透過性を評価できること、ならびに重症度も反映しうる有用なプローブになりうることを示した。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度計画に対する実際の進捗状況は①LGSを誘発するモデルマウスを確立した。①新規プローブを探索し、その血中濃度測定法を確立した。②LGSモデルマウスにおいて当該プローブの全身循環への移行が増大することを確認した。以上の成果により、LGSをマウスモデルの確立、LGSを評価する新規プローブの探索と評価法の確立という本年度目標は達成することができたため、本研究は順調に進展していると考えている。
LGSと全身疾患との関連性について、まずは疾患の重症度と腸粘膜透過性の程度との相関を検討する。対象疾患として食物アレルギー、クローン病を予定している。そして、それらの疾患の発症や増悪とLGSとの関連を詳細に検討していく。同時に本年度確立した新規プローブをLGS診断へ応用することを視野に入れ、必要に応じてより高感度且つ簡便な新規プローブを定量法の確立も試みる。これら検討が順調に進んだ場合にはヒトでの有用性を検討するべく、プローブの薬物動態や毒性試験など基礎的なデータを集めながら研究を進めていく。
平成28年度の実験計画が順調に進んだため、実験動物購入費用に若干の余裕ができ、当該助成金が生じた。
平成29年度の実験計画では、疾患動物モデルを使用して疾患の重症度と腸粘膜透過性の程度との相関を重点的に検討する。前年度繰り越し分と合わせた平成29年度助成金は、疾患動物モデルの作成およびその評価にかかる試薬、器具類の費用に使用する計画である。
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PLos One
巻: 12(4) ページ: e0175626
doi.org/10.1371/journal.pone.0175626
http://www.med.shimane-u.ac.jp/pharmacology/index.html