研究課題
本研究では、1.腸粘膜バリア低下(leaky gut syndrome:LGS)を呈する動物モデルの作製。2. ヒトに適用可能なLGS評価方法の確立。3.全身疾患の発症におけるLGSの関連性の解明を目的として検討を行った。2016年度は腸粘膜血流の遮断/再灌流によって重度のLGSを呈するモデルを作製し、このモデルを用いて、ある試薬(試薬K:ヒトに投与可能な成分)が既存の指標と遜色なくLGS状態を評価することを示した。2017年度は種々の重症度で腸粘膜バリア破綻状態を呈するマウスモデルの作製を試みた。その結果、①NSAIDsとプロトンポンプ(PPI)阻害薬を投与する。②ニワトリ卵白アルブミン(OVA)によって食物アレルギーを誘発させるという2つの条件でLGSが生じることを見出した。また、試薬Kの小腸からの吸収量はNSAIDs+PPI阻害薬<食物アレルギー<虚血再灌流となり、この順で軽度、中等度、重度のLGS状態を呈するモデルが作製できた。さらに、デキストラン硫酸ナトリウムによる大腸炎モデルでも試薬Kの吸収が増大した。これらの結果から、試薬Kは小腸と大腸の両方で種々の程度のLGS状態を評価できる指標となることが示された。次に、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とクローン病モデルマウスを用いて、各疾患の病態形成と腸粘膜バリアの破綻との関連性を検討した。その結果、いずれのモデルにおいても症状(NASH: 肝臓の炎症、クローン病:小腸の病変や下痢)が生じ始める前の段階で小腸から吸収される試薬Kの量が増大した。また、クローン病モデルでは症状の発現に伴って試薬Kの吸収が増大し、吸収増大が起き始める段階で小腸内の種々の内因性因子が増加していることが示された。このことから、腸粘膜バリアの破綻がクローン病の発症に関与する可能性が示唆された。
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