研究課題
胃癌の腹膜播種転移は治療困難であり、予後不良である。その原因として、全身投与による化学療法を行っても、腹膜播種転移病巣に薬剤が到達しづらいという問題点がある。近年、腹膜播種に対する腹腔内投与による化学療法の有用性が報告されているが、その効果も限定的である。そこで、今回我々は以前より開発、研究を行っている腫瘍溶解ウイルス(OBP-301)を腹膜播種の治療に応用すること考えた。OBP-301は癌細胞のもつ高いテロメラーゼ活性に依存して制限増殖する腫瘍融解アデノウイルスであり、今回は、ウイルス内に緑色蛍光蛋白(GFP)を搭載したOBP-401を使用した。OBP-401は、腫瘍増殖とともにGFPを発現し、微小な腹膜播種をGFP蛍光にて検出できるという特徴がある。まず腹膜播種を来たしやすい未分化な胃癌細胞株であるGUIYとKATO-IIIの2種類の細胞株を使用し、in vitroで化学療法(Paclitaxel:PTX)およびOBP-401の単独療法および併用した場合の抗腫瘍効果についてXTT assayにて確認を行った。単独療法でもdose-dependentに抗腫瘍効果を認めたが、併用療法ではより強力な抗腫瘍効果を示し、CalcuSyn Softwareを用いた解析により、併用療法では相乗効果を認めることが確認できた。また、western blottingを用いた実験により、各治療による腫瘍細胞の細胞死のメカニズムを解析したところ、PTXによりアポトーシスが誘導されていることがわかり、OBP-401では、アポトーシスおよびオートファジーの両方が誘導されていることを証明した。さらに、併用療法の場合には、OBP-401によるオートファジーの誘導がより低濃度で誘導されることを証明した。
2: おおむね順調に進展している
In vitroでの実験については、概ね研究計画通りに進んでいるものと考え、予想した結果を得られていると考える。また、次年度に予定している研究の準備にもとりかかれているため。
In vitroの実験は概ね計画通りに進んでいるが、今後in vivoの実験を行う必要があり、現在徐々に進行中である。さらに微小腫瘍を検出するimagingの実験についてもin vivoで行う必要がある。さらにウイルスおよび化学療法の併用実験における相乗効果の機序についても今後解明していく予定である。
実験消耗品の購入が当初の予定より安く済んだため。
繰り越しとなった金額は、主に次年度の実験消耗品に用いる予定である。
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