本研究は、レチノイン酸受容体であるRARγの軟骨内骨化における機能を包括的に検討することを目的としている。そこで、RARγを特異的に活性化するアゴニストを用いて軟骨細胞への影響や、動物に投与した際の影響について調査するとともに、アンタゴニスト投与による骨の治癒促進効果について検討を行った。 初年度である28年度には、RARγによって軟骨細胞分化が抑制されることを確認し、発生段階のマウスへアゴニストを投与することで軟骨内骨化により形成される骨の成長が阻害されることを確認した。また、この過程では多くの軟骨関連遺伝子の発現に変化が生じる事が明らかとなり、アンタゴニストによってこれらとは逆の影響があること、すなわち軟骨内骨化の促進が生じる可能性が確認された。 最終年度となる29年度には、RARγによって制御される遺伝子を網羅的に探索するため、高速シークエンサーをもちいてRNAシークエンスを行った。具体的にはRARγアゴニスト投与を行った軟骨細胞と、投与しない軟骨細胞で発現するRNAの違いを検討した。この実験にあたっては、アゴニストによるオフターゲット効果を除去する目的で、RARγを欠損したマウスからも軟骨細胞を採取し同様の解析を行い、より精度高くRARγの下流で働く因子の探索を試みた。この結果、これまでの研究によってすでに関係の証明されている因子に加え、多くの因子がRARγの活性化により影響を受けている事が明らかとなった。また、骨欠損の治癒に対してRARγアンタゴニストの投与が有意に効果があるということをマウスを用いた実験で明らかにした。 現在は、RNAシークエンスにて得られた膨大なデータの解析を進めており、軟骨形成における新たな遺伝子ネットワークを示すべく多面的なアプローチで検討している。
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