本研究課題では、ボツリヌス毒素(BoNT)の化学シナプスによる情報伝達を抑制する効果を用いて、神経障害性疼痛の発症機序ならびに感覚入力における情報伝達機構を解明することを目的とするものである。 平成30年度の研究実施項目に従って進捗し、下記の研究成果を得た。 研究項目1) 三叉神経節・脊髄神経系・中枢におけるBoNTの膜タンパク質SNAP-25の切断;in vivoの三叉神経節細胞・後根神経節細胞において、SNAP-25の発現を確認することはできた。末梢におけるBoNT投与により、そのSNAP-25の切断を確認するためタンパク質切断認識抗体を用いて様々な条件で検討を行い、末梢に投与されたBoNTによるSNAP-25の切断は、三叉神経節細胞と後根神経節細胞において確認できなかった。 研究項目2) 神経障害性疼痛モデルにおけるBoNTの侵害受容2次ニューロンへの効果;6週齢ラットの総腓骨神経を結紮し、von Frey filamentを用いた機械的刺激、およびプランターテストを用いた熱刺激を加え、逃避行動を示す閾値と潜時の測定を行った結果、1次ニューロンと2次ニューロンへBoNTを投与することにより神経障害性疼痛モデルラットにおいて発現する疼痛関連行動を軽減することは認められなかった。またその各投与部位においてBoNTによる興奮伝達の抑制効果を検討するため脊髄における組織学的検討を行った結果、神経障害性疼痛モデルラットにおいて誘発される2次ニューロンの過剰興奮を抑制することは認められなかった。
|