研究課題/領域番号 |
16K21188
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高橋 明子 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (10644213)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 日射量 / 画像解析 / 太陽光発電 |
研究実績の概要 |
現在,太陽光発電(PV)システムの導入が拡大している。しかし,PV電力は気象条件により急峻に変動するため,PVシステムの普及と安定した電力供給のためには,広範囲な日射量を求める必要がある。そこで,カメラを用いて広範囲な日射量を計測する汎用的な技術を開発している。 平成28年度は,(1)カメラの選定,(2) 推定モデルの改良,(3) 複数地点の日射量を計測するシステムの開発を行った。我々の開発しているカメラを用いた日射量計測手法では,撮影した画像の色情報であるHSV値(H:色相,S:彩度,V:明度)を用いて日射量を求める。そのため,カメラ側で自動的に色情報を補正する機能はないことが望ましい。そこで(1)では,複数のカメラを比較し,開発している手法に適したカメラを選定した。 (2)では,画像上の任意一地点の日射量を計測するための日射量推定モデルの改良を行った。これまで開発した手法では,計測地点の明度値と日射計で計測した実測日射量との相関から,予め天気別の2種類の推定モデルを作成し,日射量計測時は気象庁が発表する天気に従って使用する推定モデルを切り替えていた。しかし,天気の発表が1日2回であるがゆえに推定モデルの切り替え回数が少なく,計測精度が悪くなる欠点があった。そこで,明度に対し基準値を設けて,計測時の画像の明度値によりリアルタイムに2種類の推定モデルを切り替える技術を開発した。これにより,実測日射量とのRMSEが従来法に対して20%改善した。 これまでの研究では,任意の一地点の日射量を計測する技術を開発してきた。広範囲な日射量を計測するためには,画像内の複数地点の日射量を同時に計測する必要がある。そこで(3)では,同一画像内の任意の複数地点の日射量をリアルタイムに計測するためのシステムを開発した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実施の概要」で記載した通り,研究計画に従い上記3項目を実施した。日射量計測のための推定モデルの改良法として,計測した画像の明度値によりリアルタイムに2種類の推定モデル切り替える手法を提案し,その成果を国際会議(ICEE 2016)にて発表した。また,既に発表した手法では,2種類の推定モデルを作成する際に,日射計で計測した実測日射量が必要である。そこで,実測日射量でなく計測地点の緯度・経度より算出可能な理論日射量を用いて推定モデルを作成する手法の開発に着手しており,一定の成果を得ている。本成果については,平成29年度の国際学会にて発表予定である。さらに,複数地点の日射量をリアルタイムに計測するシステムを開発し,国内学会(日本太陽エネルギー学会・日本風力エネルギー学会合同研究発表会)にて成果を発表した。以上より,当初の計画をおおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,これまで開発した技術を発展させてより汎用性の高い計測が可能となるように,(1)理論日射量を用いた推定モデルの開発,(2)計測地点の位置情報を考量した汎用推定モデルの開発を行う。また,(3)実証実験を行うための気象観測装置を設置し,データを収集する。 平成28年度に開発した技術は,任意の一地点に対して予め日射計により計測した実測日射量とHSV値から推定モデルを作成する。この技術では,推定モデルを作成する際に日射計が必要となる。そこで(1)では,実測日射量でなく計測地点の緯度・経度より算出可能な理論日射量と快晴日に計測されたHSV値から推定モデルを作成し,作成したモデルを補正することにより天気別の推定モデルを作成する。これにより,日射計がなくても推定モデルを作成することが可能となる。 またこれまでの技術は,任意の一地点に対する推定モデルを作成し,日射量計測時は作成した推定モデルを用いてモデル作成地点の日射量を計測するものであった。この技術をそのまま拡張して複数地点の日射量を計測する場合,計測地点毎に日射量推定モデルを予め作成する必要があり,汎用性に欠ける。同一画像内の複数地点を計測対象とした場合,計測対象とカメラや太陽の位置関係によって色情報が変化する。そのため(2)では,これらの位置関係を考慮して,任意の一地点で作成した推定モデルを補正することで複数地点の日射量を計測する技術を開発していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
差額が生じた主な理由は以下の3点である。(1)既に保有していたカメラを「カメラの選定」に使用できたこと。(2)海外で開催される国際会議に参加する予定であったが,国内で開催された国際会議に参加したため旅費に差額が生じたこと。(3)推定モデルの改良は行えたものの,年間を通して測定したデータの整理が行えなかったため予算計上していた謝金に差額が生じたこと。
|
次年度使用額の使用計画 |
実証実験を行うための気象観測装置の購入および,研究動向ならびに調査・研究成果の公表のための国内外出張,研究推進のための謝金のための経費として使用予定である。
|