本研究は,アクティブ・ラーニング型授業の一種として注目されているジグソー法の授業設計方法開発を目的として,学習事項を可視化する「機能機構階層図(FMH)」を用いた教材設計方法を提案し,有効な運用方法の検討を行うものである.本年度は主に,(1)初等中等教育課程での実現可能性検討,(2) FMHの作成方法の検討,(3)FMHを用いた新たな教材設計方法の有用性検討の3点に取り組んだ. (1)初等中等教育課程での実現可能性検討では,研究会参加や学校訪問を通して,初等中等教育課程の教員らと,本研究における提案方法を小学校,中学校,高等学校での実践に利用することを想定した実現可能性の検討を行った.その結果,本研究の提案方法による授業改善や授業設計には有用性が見込まれるものの,FMHの作成,学習者の学習データ収集と分析に課題があることが確認された.これらの課題は,ICT利用などによって解決が見込まれるため,引き続き検討を行う予定である. (2)FMHの作成方法の検討では,過去のFMH作成実践の分析から作成時の留意点や手順の整理を行った上で,研究協力教員と共にFMHの作成を行い,FMHの作成時に作成者の思考を促す声掛けや,説明モデルの見直しを促す声掛けなどのサポートが有効であることを確認した. (3)FMHを用いた新たな教材設計方法の有用性検討では,実践に使用されている教材や実践結果をFMHを用いて分析することで,授業中の学習者の知識利用の様相や,学習者の多様な学びと教材の関係を可視化し,教材設計に対する有用な知見を示すことができた.これらの成果は,教育工学会第33回全国大会,2017年度教育工学会第4回研究会で報告した.さらに,日本教育工学会論文誌に論文を投稿して審査中である.
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