研究課題/領域番号 |
16K21191
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
雨宮 嘉照 広島大学, ナノデバイス・バイオ融合科学研究所, 特任助教 (20448260)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | バイオセンサー / 光エレクトロニクス |
研究実績の概要 |
28年度は、シリコン基板上光学バイオセンサーのアレイ化および微小多分岐流路作製技術の確立のための基礎的研究が主なもので、それ以降の年度は、素子作製工程の改善および素子性能の評価や多項目検出の実証が中心となる計画案としていた。その中で、今年度はアレイ化した際に問題となる導波路の交差部形状の選定と、流路分岐に必要となる微小バルブ形状の作製および材料選定が主なのもとなった。 導波路交差部の形状については、2次元構造で交差部導波路を太くしてクロストークを低減させる形状と、スポットサイズ変換器と呼ばれる導波路幅を細くしていく形状について当初は検討をしていたが、光シミュレータを用いた結果により、交差部導波路幅を2段階のエッチングにより縦方向に太さを変えた、多少3次元方向に形状を持たせた方がクロストークが減少することを確認した。今後は、実際にシミュレータで確認した形状をシリコン基板上に作製し、クロストークや導波路損失など光学特性の評価を行なう予定である。 流路分岐のための微小バルブについては、基板に対して縦方向に動作する形状と横方向に動作する形状の両方を検討した。材料としてはシリコンや金属など無機物を検討していたが、作製の簡易化や動作電圧の低減のためにフォトレジストにて作製を行った。2種類のフォトレジストを用いて多層構造を形成し、最終的に1種類のレジストのみ剥離して流路およびバルブ形状を作製した。そのために、剥離工程に対して選択性を持つレジスト材料の選定や露光量、ベーク温度などの作製条件の探索を行い、バルブ形状が作製できることを実証した。今後は素子作製工程を改善して、溶液が良好に流れるような形状の流路を作製し、流路やバルブの動作確認およびバイオ物質の検出について検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定より進展している部分と、遅れている部分の両方があり、全体的には順調と考えられる。進展している部分は、28年度以降で光シミュレータにてアレイ化による導波路交差部の形状を絞る予定であったが、28年度中にある程度の形状の選定は行えている点である。遅れている部分は、SOI基板でシリコンもしくはシリコン窒化膜の両方のアレイ化した光回路を作製して検討する予定であったが、作製する段階までは至っていない点である。その他、流路を形成する材料や作製条件の確立については、改善の必要性があるが当初予定していた進捗状況で達成できている部分であり、計画の進捗状況は標準的であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
29年度は、28年度に実施できなかった光学バイオセンサーをアレイ化した光回路の作製を行う。シリコンおよびシリコン窒化膜の両方の導波路を検討し、良好な特性を示す材料を選定して注力していく。さらに、バイオセンシングの感度増強のために、素子の構造はスロット導波路と呼ばれる溝が付加された部分の電界が強くなる構造を検討する。光シミュレータを用いて、導波路交差部の形状をより詳細に検討するだけでなく、スロット形状についても詳細な構造を探索する。 また、28年度に続き微小多分岐流路の作製を行い、バルブの物理特性や溶液の流速などの流路の性能評価から、流路の作製条件だけでなく膜厚、流路サイズ、バルブ構造のサイズなど素子の構造自体も改善させる。バイオセンサーの性能の確認については、簡易に行うために初期にはショ糖濃度依存性を測定して検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
28年度の申請で計上していた物品費で購入予定であった装置が、実験の進捗状況に応じた実験の変更および装置の慎重な選定作業により未購入であるためと、消耗品などのその他の経費については、より経済的に実験を行うことにより当初予定より少額の使用で済んでいたために未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度の申請で計上していた物品費で購入予定であった装置の購入を行い、その他の残りの金額を学会発表の旅費や研究に必要な消耗品の購入に充てる予定である。
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