浅水帯のUAV写真測量における水面屈折補正(水面での光の屈折により水底が浅く推定される効果を補正するために、通常の解析で得られる見かけの水深に補正係数を乗じること)について、昨年度の結果を踏まえ、現地実験から求めた補正係数が安定しなかった問題を精査した後、CGを用いたシミュレーションによって原因と対策を検討した。 はじめに、これまでの現地実験の結果を精査したところ、特に信頼性の高い現地実験結果2ケースでは、補正係数を理論的下限1.34より過小評価していることが確認された。次に、その原因をCGシミュレーションで検討した。CGシミュレーションでは、200 m四方の平坦な対象領域の中央に、幅100 m、深さ2 mの水路を掘り、水路に水面を張ったケースと張らないケースについて、SfMの結果を比較した。その結果、SfM段階における水面屈折のカメラパラメータ推定への影響によって、水底の高さ(標高と呼んでも問題ない)を低めに推定する現象があることが突き止められた。この現象は、水底のみならず、水路に近い陸地部分を含めて高さを低めに推定するものであり、河道中心線に沿って最もバイアスが大きくなったことから、「谷状変形」と名付けた。「谷状変形」は、従来から知られていた「ドーム状変形」「ボウル状変形」と異なる、河道特有の新しい非線形系統誤差であると考えられる。 さらに、シミュレーションケースを増やして谷状変形への対策を検討した結果、斜め撮影の導入に加え、SfM段階において、画像上で冠水部をマスクアウトする(使わないようにする)対策が有効であることが明らかになった。 最後に、最近登場した、撮影位置の高精度測位が可能なUAVを用いて、佐波川の中央橋付近において現地実験を行い、標定点を一切用いずに、屈折補正係数1.42を用いて、冠水部における誤差を0.1 m未満 (RMS)に抑えることに成功した。
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