近年、肺線維症における新たなエフェクター細胞として、線維細胞の存在が報告された。線維細胞は骨髄由来のCD14陽性単球系細胞より分化し、高い抗原提示能を持つと同時にコラーゲンI、ビメンチン、フィブロネクチンなどの細胞外マトリックス産生能を有する間葉系前駆細胞とされている。線維細胞とヒト肺線維症との関連性については多数の報告がなされており、その詳細な機能解析、及び制御法の開発が望まれる。 本研究では、線維細胞に発現するCD49cの機能を明らかにし、インテグリンに着目し線維細胞の遊走能制御による新たな膠原病肺治療法の開発へ発展させることを目的とした。 本年度は、マウス線維細胞におけるCD49cの発現様式についての検討を行った。フローサイトメトリーでの解析により、ブレオマイシンで炎症を誘導したマウス肺組織由来の線維細胞と思われる細胞を同定したが、マウスCD49cに対する抗体がポリクローナルのものしか入手できず、フローサイトメトリーによる発現様式の解析が困難であった。ウェスタンブロット法による検出のため、マウス肺由来の線維細胞の単離を試みたが、マクロファージとの厳密な区別が困難であり、本年度はマウス肺線維細胞を高純度で単離できる方法の樹立にむけた研究に終始した。もともと特異的な発現マーカーが同定されていない細胞であり、血球系細胞に発現する各種マーカーを組み合わせることで、概ねマクロファージとの識別は可能となった。今後は同細胞を単離し、各種インテグリンの発現様式、及び機能を解析するとともに、線維細胞特異的な発現マーカーの同定を目指した研究へと展開する予定である。
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