研究実績の概要 |
高齢者や有病者などの易感染性宿主は、口腔細菌による誤嚥性肺炎の発症リスクが高く重症化しやすい。さらに口腔環境が不衛生になりやすく、日和見感染菌の検出率も高い。緑膿菌の病原因子の一つである、ピオシアニンは、誤嚥性肺炎の病態確立に極めて重要な病原因子であることから、「不衛生な口腔環境下において口腔細菌がピオシアニン産生を促進させ、誤嚥性肺炎の重篤化をもたらす」可能性が考えられる。 本年度は、ピオシアニンが肺上皮細胞に及ぼす影響を検討した。肺胞細胞であるA549にピオシアニンを各濃度(5, 25, 50 μM)で24時間刺激したところ、25, 50 μMでは細胞死を起こしていた。細胞が死滅しないピオシアニン濃度を検討するためにMTTアッセイを行ったところ、10 μM以下が適当な濃度であることが示された。これまでに、ピオシアニンは肺上皮細胞で様々な炎症性サイトカインやムチンを分泌することが知られているため、本研究ではA549を用いてピオシアニンを作用させた際のIL-8、CCL20の発現を検討した。しかしながら、コントロールと比較して発現に影響を与えていなかった。また、種々のムチンも同様に、コントロールと比較して発現に影響を与えていなかった。今後は、気管支上皮細胞で同様の検討を行い発現に影響を与える指標をスクリーニングするとともに、F. nucleatumの培養上清を添加し産生させたピオシアニンを用いた検討を行う予定である。
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