研究課題/領域番号 |
16K21199
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研究機関 | 徳島県立農林水産総合技術支援センター(試験研究部) |
研究代表者 |
渡辺 崇人 徳島県立農林水産総合技術支援センター(試験研究部), 徳島県立農林水産総合技術支援センター(資源環境研究課), 研究員 (30709481)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / エンハンサートラップ |
研究実績の概要 |
ヒトでの付属肢再生の可能性を探るには,昆虫や一部の脊椎動物が持つ再生現象の分子メカニズムの理解が必須である。しかしながら,再生初期に多分化能を持つ再生芽と呼ばれる幹細胞群が,どのように形成されているかは明らかにされていない。本研究では,不完全変態類昆虫のモデル種であるフタホシコオロギにおける再生芽形成メカニズムの解明を目的とする。 再生過程のような発生過程と同じような遺伝子が用いられる現象の場合,単純なノックアウト系統を作製しても発生過程の表現型により致死となってしまう可能性が高く,部位・時期特異的に遺伝子の機能を破壊するコンディショナルノックアウト個体を作製する技術が必要である。そこで、当該年度においてはまずコンディショナルノックアウト系統作製技術の確立を試みた。コンディショナルノックアウト系統作製には、CRISPR/Cas9 システムによるノックイン技術とpiggyBac のような転移酵素を組み合わせることを考えた。当初は、部位・時期特異的なプロモーターで転移酵素を発現させるコンストラクトをトランスジェニック技術により組み込む予定であったが、挿入されたゲノム上の位置によって発現が安定しないという問題があったため、エンハンサートラップにより部位・時期特異的に転移酵素を発現させることとした。まず、ゲノム編集技術を用いて、フタホシコオロギのHox遺伝子に最小化プロモーターの下流に蛍光タンパク質遺伝子を配置したベクターをノックインした。その結果、予想される発現パターンで蛍光が観察され、エンハンサートラップ系統作製技術を確立することに成功したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、部位・時期特異的なプロモーターで転移酵素を発現させるコンストラクトをトランスジェニック技術により組み込む予定であったが、挿入されたゲノム上の位置によって発現が安定しないという問題があったため、エンハンサートラップにより部位・時期特異的に転移酵素を発現させることとした。 研究機関の異動による手続きに時間がかかり、研究の開始が遅れたため。
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今後の研究の推進方策 |
エンハンサートラップにより部位・時期特異的に転移酵素を発現させる計画としたため、転移酵素を組み込むゲノムDNAの位置を正確に知る必要がある。組み込むゲノムDNAの位置は、転写開始点の上流に組み込むことがよいと考えられるので、様々な遺伝子の転写開始点を知る必要がある。そこで、次世代シークエンサーのPacBioを用いたmRNAの発現解析により転写開始点を明らかにする。平行して、既に発現パターンが明らかとなった遺伝子の上流に転移酵素を組み込み、コンディショナルノックアウト技術の確立を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コンディショナルノックアウト系統作製技術の確立に至っておらず、予定していた数のコオロギ系統を作製できていないため、試薬の消費が予定よりも少額であった。また、予定していた学会や研究会への参加を取りやめた。また、研究機関を異動したため、種々の手続き及び共同研究契約締結に時間がかかり、研究開始が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シークエンサー解析の委託費用に充当する。機種としてはPacBioを予定しており、フタホシコオロギにおける発生、再生過程に発現する遺伝子の全長mRNAカタログを作成する。それにより、コンディショナルノックアウト系統を作製する際に、ノックインを行うサイトを決定する。
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