本研究の目的は、中国社会や共産党が農村女性の政治参加にどのように対応したかについて明らかにするとともに女性の政治参加の実態と政治参加に影響を及ぼす社会関係、 社会的連帯の要因を解明することである。 従来の研究では、農村において社会的・文化的に構築された男性優位の性別秩序のなかで生きる女性という構図のなかで女性の政治参加を捉えていた。 ここから抜け出して、 農村女性の社会関係的要因などが政治参加に与える影響について未着手であった。本研究はまだ解明されていない中国農村女性の政治参加の実態を研究し、人類学の視点から女性の政治参加について新たな理論開拓を行う。 2018年度の研究内容は、実態調査が中心であった。遼寧省沿海部、福建省、広西チワン族自治区において、農村女性が、村落内の政治参加と投票行動について、大規模なアンケート調査を実施した。その結果、女性の政治参加には、その家族構成、親世帯との居住形態にも影響を受けることが明らかとなった。またインタビュー調査では、近年沿海部の都市へ出稼ぎに出ていた農村女性が故郷の村に戻り、村落の政治運営に積極的に関与したい女性が多いことが明らかとなった。帰郷者、都市での出稼ぎを経験した女性と出稼ぎ未経験の農村女性を対象として両者を比較し、村落政治の参加の特徴を検証した。結論として出稼ぎを経験した農村女性は、村に帰郷した後、女性の村落政治の参加を促す存在であることが明らかとなった。また都市での出稼ぎを経験した女性は、村で創業し成功した女性として、地域社会や村の経済への貢献が期待できると考えられる。この調査結果をまとめ、2019年内に学会誌に投稿する。
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