研究課題
肺癌における癌細胞核形態の予後因子としての可能性に関しては、十分な検討が行われていない。本研究課題では進行期非小細胞肺癌における気管支擦過細胞診を用いた核グレードおよび切除肺癌における核グレードの予後因子としての可能性を検討した。研究方法としては、当院で2007年~2015年の間に、気管支擦過細胞診で非小細胞肺癌と診断され、治療が行われた進行期非切除症例97例を対象とした。まずパパニコロウ染色標本を用いて、強拡大視野(対物40倍)で小リンパ球を指標にして癌細胞の核径を計測した。100個の癌細胞を判定し、小リンパ球径の5倍以上の核径を有する癌細胞が優位である場合に大型核として分類した。さらにデジタル画像解析装置を用いて、核径が>15 μmを大型核として分類した。次に、Kaplan-Meier法により全生存期間と無増悪生存期間を解析した。結果としては、小リンパ球を用いた肉眼的解析およびデジタル画像解析のいずれにおいても、大型核を有する癌細胞の存在は、全生存期間の短縮に関連し、さらに大型核の癌細胞は治療開始後の無増悪生存期間の短縮にも相関していた。小リンパ球を用いた肉眼的解析およびデジタル画像解析で計測された癌細胞核の計測値は、統計学的に相関していた。さらに、当院で切除された肺扁平上皮癌の216症例を対象にして、大型癌細胞核の存在が、術後の予後不良因子(全生存期間および無再発生存期間の短縮)となることを報告した。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Am J Surg Pathol
巻: 41 ページ: 750-760