研究実績の概要 |
本研究は、アンジオテンシン受容体拮抗薬テルミサルタンの食道腺癌に対する抗腫瘍効果のメカニズムと新しい機構に関連するマイクロRNAを網羅的に解析し、in vivoを含めたテルミサルタンの抗腫瘍作用機構について検討した。4種類のARB(テルミサルタン,イルベサルタン,バルサルタン,ロサルタン)、3種類の食道腺癌細胞株(OE19,OE33,SK-GT4)に対して細胞増殖アッセイを行い、テルミサルタンのみ濃度・時間依存的に抗腫瘍効果を示していた。またin vivoの実験系では、テルミサルタンにより皮下移植された腫瘍組織の増殖において抗腫瘍作用を発揮することが示唆された。 テルミサルタンは食道癌細胞のG1サイクリンに関連する細胞周期タンパクを抑制することで抗腫瘍作用を発揮していた。そのメカニズムとして、AMPKαのリン酸化亢進によるmTORの抑制、その下流に位置する細胞周期関連蛋白の低下することを確認した。またAMPKα上流のLKB-1のリン酸化と、下流のmTOR,p70S6Kのリン酸化抑制がみられ、腫瘍増殖抑制効果に関与するものと考えられた。癌細胞抑制に関連するマイクロRNAをアレイチップを用いて網羅的解析をおこなったところ、テルミサルタン投与群とコントロール群で異なるクラスターを形成しており、なかでもテルミサルタンによりmiR-301a-3pの発現が低下し、AMPKαのリン酸化に関与すると考えられた。これらの結果より、テルミサルタンは食道腺癌に対して抗腫瘍効果が期待される薬剤であることを証明した。
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