研究課題/領域番号 |
16K21205
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
高橋 亨輔 香川大学, 工学部, 助教 (60647262)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | レジリエンスエンジニアリング / ウェブシステム / 減災 / 台風 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,災害発生時に地域住民自らが状況を判断・意思決定し,被害軽減の早期対応行動に繋げるための対応行動促進システムの開発である.具体的な研究項目として,以下の4項目をあげている.研究項目1) 過去の災害事例から行動開始の判断基準を整理した対応行動データベースの構築,研究項目2) Web情報の活用による災害時リアルタイム行動情報の収集,研究項目3) 数時間後の状況予測から地域住民の推奨対応行動の決定,研究項目4) Web地図を活用した地域住民の対応行動を促進するシステムの開発. 本研究では,地域住民に対する台風災害時の危機的状況認識と対応行動開始の支援を実現するため,レジリエンス(災害発生の危機的状況に陥ったとしても適応できる能力)の4要素(過去の危機的状況の発生を知っている「学習」する能力,現在の状況を「監視」する能力,次に発生し得る状況を「予見」する能力,危機を「対処」する能力)に着目して,研究項目1)から研究項目4)のシステムを開発する. 平成28年度は,地域住民の学習能力や監視能力の支援として,研究項目1)の災害時対応行動データベースを構築と,研究項目2) Web上からリアルタイムに災害時の行動情報を収集する手法の提案に取り組んだ.その結果,平成28年度は,研究項目1)に関する対応行動データベースの構築や,研究項目2)に関する発災時の行動促進情報提供システムを開発し,当初研究計画通りに研究を遂行できた.また,関連する研究成果を国内の学会にて発表した. 平成28年度の補助金は,これらの研究を遂行するためのワークステーションの購入費や,国内研究発表の旅費などで使用した.研究項目1)や研究項目2)の研究成果は,平成28年度の研究発表に基づき論文にまとめる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は,研究項目1)の災害時対応行動データベースを構築と,研究項目2) Web上からリアルタイムに災害時の行動情報を収集する手法の提案を予定していた. 研究項目1)に関しては,台風発生時の行政や地域住民の行動に着目し,時系列ごとの対応行動を収集した対応行動データベースの構築した.具体的には,平成27年台風11号を対象に「どこで」,「いつ」,「誰が」,「何をしたか」という観点から過去の行動事例を整理し,時系列別の対応行動を地図上で確認可能なWebシステムを構築した.研究項目2) に関しては,地域住民が,警報や避難勧告より身近に感じられる行動のきっかけとして,マイクロブログを情報源とする発災時の行動促進情報の提供を試みた.具体的には,過去の台風災害について相関ルールに基づく被害情報を取得し,住民の居住地域における被害発生と結びつきが強い被害情報を行動促進情報として提供するシステムを開発した. 各研究項目はおおむね当初研究計画通り遂行できた.また,関連する研究成果は国内の学会にて発表できた.以上の結果より,おおむね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は2年間の予定であり,平成29年度が研究最終年度である.平成29年度は,地域住民の予測能力や対処能力の支援として,研究項目3) 数時間後の状況予測から地域住民の推奨対応行動の決定や,研究項目4) Web地図を活用した地域住民の対応行動を促進するシステムの開発に取り組む.具体的には,地域住民の対応行動促進の支援として,シミュレーションにより数時間後の状況を予測し,現在位置から最適な推奨行動を決定する手法を開発する.最終的には,研究項目1)から研究項目3)の情報をWeb地図上に集約・可視化する対応行動促進システムを開発し,地域住民が活用できるようにインターネット上で公開する. また,研究項目1)や研究項目2)の研究成果は,平成28年度の研究発表に基づき論文としてまとめて査読付き論文誌に投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度予算の物品費で購入したワークステーションが,当初予定額より約12千円高額となった.これに関連して,旅費(高松―東京)に不足分が生じる可能性があったため別予算で計上した.このため次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度生じた使用額は約47千円であり,旅費などの変動する可能性のある経費で使用する予定である.次年度の支出計画に大きな変更はない.
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