高齢者が就労を阻む理由としては体力の低下が推察され、調査結果においても、高齢者における仕事の主な阻害要因は体力の低下であることが示唆されている(内閣府、2011)。しかしながら、これらの調査では、非就労者を対象に、選択肢から回答させた「仕事をしない理由」の分布状況を示しているのみであり、体力と就労の中止との直接的な関連性はこれまでに検討がなされていない。そのため、高齢者において体力が就労の中止に本当に関連しているのか、また、どのような体力要素が関連するのか、さらにはどの程度の水準が必要なのかは不明なままであった。 以上のことから、高齢者が就労などの社会的活動への参加を積極的にしやすい環境の整備を具現化するための重要な組織として考えられているシルバー人材センターを中心的なフィールドとして、①高齢者における就労の中止と体力との関連を検討すること、および②高齢者に体力の維持・向上を通じた就労中止の抑制を意図した身体活動を普及促進するための基礎的な情報を得ることを目的とした。 その結果、本研究課題では、高齢者における就労の中止(体力的な不安から直近の1年間で1度も仕事を実施していないこと)には特に筋力が関連する可能性が示唆され、さらにその筋力水準が少しでも高ければそのリスクが低下する可能性が示唆された。しかしながら、本研究では横断研究であるために因果関係については言及できないため、今後は縦断研究によってその因果関係を明らかにする必要がある。また、本研究では筋力トレーニングの集団促進介入に関する初期的な基礎資料を得ることができたが、一層の調査を進め、集団促進介入の実践・評価と展開していくことも今後の課題である。
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