研究課題/領域番号 |
16K21207
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
越智 紳一郎 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (40568911)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 間歇型一酸化炭素中毒 / 海馬神経細胞新生 / アストロサイト / マイクログリア |
研究実績の概要 |
一酸化炭素による間歇型一酸化炭素中毒の病態解明のため、まず6週齢のWistarラットに対して我々の先行研究と同様に意識消失を起こすまで一酸化炭素の濃度1000ppmを40分、3000ppmを20分曝露させた。意識消失しなかった場合、更に10000ppmを3l/minの流量で意識消失を起こすまで一酸化炭素に曝露させた。またWistarラットをルームエアのみでチャンバーに置いておいたものをコントロールとした。本研究では、低酸素脳症の影響を除外し、より一酸化炭素の影響を調べるため、空気に上記一酸化炭素を混合し、曝露中酸素が20%を保つようにモニタリングを行いながら曝露した。 また、間歇型一酸化炭素中毒のモデルができているか調べる方法として、我々の先行研究と同様に、一酸化炭素を曝露したラットとコントロールのラットには曝露前日に明暗箱を用いた受動回避試験のテストセッションを行っておき、以降曝露3日、1週間後、2週間後、3週間後の計3週間行動解析を行った。3週間で認知機能が低下したラットを間歇型一酸化炭素中毒のモデルとした。今回の研究では一酸化炭素が海馬の神経細胞新生に及ぼす影響を調べるため、3週間後ラットを安楽死させる前日にDNA 複製を行う増殖細胞の検出を調べるためブロモデオキシウリジン1.25mg/mlの濃度を1ml腹腔内注射している。翌日安楽死させた後、4%パラホルムアルデヒドによる灌流固定を行い、全脳を取り出し、その後脱水を行いパラフィン包埋を行ったサンプルを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一酸化炭素中毒作成のための高濃度の一酸化炭素の作成に長時間かかってしまったこと、また一酸化炭素を曝露している過程で死亡するラットが出ること、また生存しても十分認知機能低下を来さないラットができる(人間でも通常一酸化炭素中毒でも間歇型となるのは10%ほど)ことから、安定したモデルの作成までに若干時間がかかってしまった。
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今後の研究の推進方策 |
我々は既に一酸化炭素曝露群の海馬において、CA1、CA3から歯状回(DG)に至るまで広範に核凝縮の増加及び細胞数の有意な減少を確認しており、特にDGに関しては神経細胞新生が生じている顆粒細胞層下帯に強い障害が存在することを確認した。同時に、DGにおいてアストロサイトのマーカーであるGFAP陽性細胞数が増加していることも見出した。炎症反応や障害がグリア細胞を増加もしくは活性化させること、成体海馬神経細胞新生の減少が認知機能低下を引き起こすことが既によく知られている。従って、一酸化炭素曝露によるアストロサイト増加・活性化が種々のサイトカイン分泌やミクログリア細胞の活性化を介して成体海馬神経細胞新生の減少→認知機能低下を引き起こしている可能性が考えられる。昨年度作成したサンプル、及び今年度作成したサンプルを基に、一酸化炭素曝露が成体海馬神経細胞新生やグリア細胞に及ぼす作用を、各細胞特異的なマーカーやBrdUの抗体を用いた免疫染色やアポトーシスを検出するTUNEL染色を組み合わせて行うことにより検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに用いたが、一酸化炭素の納入が遅れるなど当初よりも、実験の開始が遅れたことなどから、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ラットの購入などの物品費として使用する予定。
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