我が国の魚類養殖において、魚病の発生は慢性化しており、安定的な養殖生産を行う上で大きな障害となっている。本研究課題では、養殖マダイ血液中で発現しているノンコーディングRNA(ncRNA)を網羅的に解析し、魚類の免疫や代謝、ストレス耐性などで機能的な働きをもつncRNAを探索する。さらに、魚病感染時や、水温などの環境変化に伴うマーカーncRNA の発現の変動を解析する。本研究成果により、魚類の血液で発現しているncRNA が持つ、免疫系や生理状態における機能が明らかとなれば、簡便かつ定量的に魚病の早期発見や健康状態の把握が可能となり、被害の大幅軽減に繋がると期待される。 今年度は、昨年度にエドワジエラ症感染マダイおよび健常マダイの全血から抽出したスモールRNAの配列を、次世代シーケンサーを用いて網羅的解析を実施した。その結果、それぞれのマダイの全血に存在するスモールRNAの配列が明らかとなった。それらのRNAの配列および発現量を、次世代シーケンサーで比較した結果、単球炎症反応やアポトーシス、細胞死、自然免疫、微生物防御等に機能を持つと考えられる13種のスモールRNAで、感染魚で発現量が増加または低下していた。これらのスモールRNAのうち、次世代シーケンサーの解析で特に発現が顕著であった4種(配列の変異を含めると7種)について、定量PCRによる測定系を構築し、養殖生簀で飼育しているマダイの0歳魚および1歳魚の感染に伴う発現量の詳細な変動を解析した。その結果、エドワジエラ症の感染が認められた9月に、発現が増加または減少したスモールRNAが2種見られた。このことから、これらのスモールRNAが本症感染の早期検出マーカーに有用となる可能性が示唆された。今後は、感染状態と発現量を個体毎に解析する必要がある。
|