本研究では側鎖液晶型ポリマーを疎水性ブロック、温度応答性ポリマーを疎水性ブロックとする両親媒性ブロックコポリマーを合成し、液晶配向を駆動力として温度応答性ポリマーが形成するシリンダードメインを垂直配向させた新しいナノシリンダーチャネル膜を開発することを目指した。 前年度の時点で、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)と側鎖液晶型ポリマーであるPMA(LC)を組み合わせたブロックポリマー(PNIPAM-b-PMA(LC))を合成し、種々の条件下で製膜、アニーリングを検討し、THF/水混合溶媒系で垂直配向シリンダーミクロ相分離構造の形成の可能性が示唆された。今年度は、形成されるシリンダーの空孔サイズ制御を目的として、ポリエチレンオキシド(PEO)とPNIPAMを連結したブロックポリマーを親水性ブロックとしたトリブロックターポリマー(PEO-b-PNIPAM-b-PMA(LC))を合成した。PEO-b-PNIPAMの合成までは多分散度の低いポリマーが得られたが、ターポリマーを合成する段階で多分散度が2.3と増大した。その影響か、得られたターポリマー薄膜は垂直配向シリンダーミクロ相分離構造の部分と、無秩序な部分が混ざったような構造が観測された。 また、前年度合成したDiels-Alder型架橋反応部位を有する液晶ポリマーと光架橋性部位を有する既存の液晶ポリマーを用いてブロックポリマーを合成し、架橋反応による自立薄膜作成を検討した。 Diels-Alder型架橋反応を用いた場合、架橋反応自体は確認できたものの、シリンダーミクロ相分離構造が得られなかった。一方、光架橋反応を利用した場合、部分的にシリンダーミクロ相分離構造を形成した自立薄膜が得られた。この結果は、前者が熱アニーリングのみで相分離誘起と架橋が行われるのに対し、後者はそれぞれ独立したプロセスであるためと考えられる。
|