骨の組織再生を目的にチタンが臨床応用されているが、新生骨再生が遅く、治癒期間が長いことが問題であった。本研究では、抗炎症性を有するリポソームをチタン表面に修飾することで、骨再生が促進されるか細胞、動物を用いて検討した。前年度、チタン表面に抗炎症性リポソームを修飾する手法を開発した。生理条件下において、抗炎症性リポソームは徐放された。この徐放は1カ月程度持続した。本材料を初代培養マクロファージおよび実験動物を用いて抗炎症性と骨組織の再生について評価した。大腸菌由来リポ多糖(LPS)あるいはLPS/インターフェロンγ(IFNγ)にて刺激した初代培養マクロファージは、未修飾チタン基板上で各種炎症性サイトカインを産生したが、抗炎症性リポソーム修飾チタン基板上では炎症性サイトカイン産生が著しく減少した。また、活性酸素種の産生も抑制された。一方、トランスフォーミング増殖因子(TGFβ)やIL-10等の抗炎症性サイトカイン産生が増大した。この結果は、抗炎症性リポソーム修飾チタン上では、組織修復性マクロファージの表現型への変換を誘導できることを示している。さらに、ラットの骨欠損部に修飾チタンおよび未修飾チタンを埋植し、骨再生の詳細を病理組織学的に評価した。修飾チタン周囲では未修飾チタンと比較して、著しい新生骨の再生が認められた。以上より、バイオマテリアル周囲に組織修復性マクロファージを誘導することは、骨組織の再生に有用であると結論付けた。
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