本研究は、ドイツと日本のEタンデムの実践研究、およびこれまで行われた日本語に関連するタンデム学習の調査に基づき「タンデム学習のガイドライン」を作成しようとするものである。具体的には①日本語とドイツ語のEタンデム・プロジェクトを実施し、参加者への質的調査から、Eタンデムでの学習活動の特徴と、参加者のEタンデムでの学び、サポートシステムの効果について考察した。また、②文献調査等から日本語に関連する対面式タンデム学習とEタンデムの実践を整理し、その違いを記述した。 研究方法:ドイツのハノーファー大学と共同で学期毎に6週間のEタンデム・プロジェクトを3期に渡り実施した。各学期に協力者を募り、2回分の学習中の会話データを収集しその特徴を分析した。また、プロジェクト期間終了後に質問紙調査とインタビュー調査を実施し、学習者の学びを分析した。さらに、Eタンデムで学習者が使用した学習ストラテジーを調査し、分類した。 研究成果:①の調査の成果として、参加者が選択する学習内容と方法には一定の共通点はあるものの各ペアによって大きく異なっていたこと、パートナーをサポートする際、とくに語彙と発音に意識が向けられていたこと、Eタンデムは「学習環境が良い」「楽しい」ものだと捉えられていた一方で、目標言語レベルが低いことから、コミュニケーションに対する不安や、使用言語の偏りを感じた参加者もいたことがわかった。学習ストラテジーについては、Otto(2003)の分類にproceduralized strategyを加えて分類した。②の調査の結果としては、対面式タンデム学習とEタンデムの実践を比較した結果、両者には物理的制約、意味交渉の仕方、サポートの仕方の3点に違いがあることが明らかになった。①と②の成果として、最終的に「タンデム学習のガイドライン」を小冊子とし、ウェブ上に公開した。
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