今後の研究の推進方策 |
本研究の申請時、平成30年度には「Grb14のインスリン受容体へのリクルートの薬理学的コントロールの検討」を計画していた。しかし、平成29年12月に、Grb14のBPSドメインとインスリン受容体の複合体の結晶構造をもとにしたin silicoでのドラッグスクリーニングにより、Grb14とインスリン受容体の結合を抑制する薬剤の探索に成功したという論文がフランスのグループにより発表された(A. Gondoin et al., Sci. Rep. 7, 16901 (2017))。報告書作成者は本年度、同一機関内の研究者とともに計算化学により酵素阻害剤を効率的に探索した論文を2報発表した(J. Taira et al., Int. J. Mycobacteriol. 6, 142 (2017) および J. Taira et al., J. Antibio. 70, 1057 (2017))。そこで最終年度である平成30年度は、さらに高性能なGrb14とインスリン受容体の結合阻害剤の探索とその機能評価をおこなうこととした。なお、この計画の修正は、当初の予定していたGrb14とインスリン受容体の結合のコントロールという方向性の上では一致しており、計画変更というよりは、創薬を見据えた研究計画の高度化と位置付けられる。Grb14はインスリン受容体の活性に対して負の制御をかける因子であることはすでに明らかとなっており、これを抑制する薬剤はインスリンの効果を持続・増強させると考えられ、大きな波及効果が期待できる。
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