本年度は、局所線形法による確率密度関数のノンパラメトリック推定の実装の改善と、オークション理論における情報レントの研究を主に行った。 オークションの構造推定手法の改善に関する研究では、通常のカーネル推定と二種類の局所線形法による確率密度関数のノンパラメトリック推定を行い、複数のケースでモンテカルロシミュレーションによりパフォーマンスを比較している。このためシミュレーションの際の計算量が大きくなり、結果を得るのに時間がかかるのが難点であった。この問題に対応するため、並列計算が可能になるようにプログラムの書き換えを行い、標準的な回数のシミュレーションを試行することが可能になった。 推定手法のパフォーマンスに関しては、平均積分二乗誤差の基準から、経験分布関数を直接平滑化する手法が最も優れていると結論付けた。なお、もう一つの局所線形法である、経験分布関数から新しいデータを生成して局所線形回帰にかける手法は、分布によってバイアスが通常のカーネル推定より大きくなってしまうこともあり、実際の推定に用いるのは難しいと考えられる。結果をまとめた論文が日本経済学会2019年度秋季大会に採択された。 オークションにおける情報レントの大きさについての研究では、確率的順序と情報レントの大小の関係について考察を行った。確率的順序は数が多く、関係も複雑である。その中で経済学に結びつきが強いと思われるものを選び、相互関係を整理した。dispersive orderとexcess wealth orderに特に注目し、予定価格が存在するケースでの情報レントとの関係について調べた。結果を論文にまとめ、英文査読付き学術誌に投稿した。
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