研究課題
本研究の目的は,「実践の中の知」の獲得を目指した身体教育の可能性を提示することである。本研究では,運動実践者における「実践」の様態を明示し,「情報」としての実践を「知」としての実践へと変容できる身体教育の可能性を提示する。それは,学習者の身体に「知」としての実践が構造化され,彼らの身体に「最適性」が存在することを自覚できるような教育である。最終年度は次の2点について検討した。まず,身体教育における学習内容としての「実践の中の知」である。暗黙的で直観的な知である「実践の中の知」の形成は行為の中にあり,行為の中の省察は行為の現在に縛られている。運動実践における「実践の中の知」は,運動実践を学習対象の一つとして扱う身体教育において意図的に学習することができる。その学習内容は,探索から得る自己や他者の身体の実感,判断から生ずる意味の自己制作,感覚-運動的知識・技能から成立する知覚内容への気づき,である。次に,人間の運動実践において働く「最適化する能力」である。その能力は,「自らの可能力性に裏打ちされた身体に応じて調整する力」と位置づけることができる。我々が運動を実践する時,自らの身体的能力に応じて構造化する。この構造化の時に最適化が働き,構造を破綻させないように調整する。人間の運動実践は,身体的能力によって構造化された運動を意図的に発生させるということである。その能力は人間の可能力性に支えられている。この可能力性が「私はできる」を支え,「私はする」や「私は動く」を発生させる。以上から,「実践の中の知」の獲得を目指した身体教育とは,自らの身体を最適化して運動する能力の育成が運動実践によって可能であり,その育成を身体教育が担えること,その可能性は人間の可能力性や最適化する能力と学習内容としての「実践の中の知」を対応させることによって見出せること,という結論が導き出された。
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長崎大学教育学部教育実践総合センター紀要
巻: 18 ページ: 11-17
長崎大学教育学部教育実践研究紀要
巻: 18 ページ: 38-44