研究課題/領域番号 |
16K21234
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
黒崎 陽平 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (40415443)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エボラウイルス / 感染症 / 熱性疾患 / 西アフリカ |
研究実績の概要 |
2013‐2016年の西アフリカにおけるエボラウイルス病(Ebola virus disease, EVD)の流行において、発熱、下痢等の臨床所見からEVD疑いとされた症例のうち、PCR検査で実際にEVD確定とされたのは20-30%程であり、その多くはEVD疑似症例であった。本研究では、EVD疑似症例が起因するウイルス感染症を明らかにし、その成果を通じて西アフリカにて発生する感染症の基盤情報を得ることを目的とする。 本年度は、西アフリカを対象とした疫学調査報告から本研究で調査対象とする感染症を決定し、各病原体を検出するためのPCR法を評価した。ギニア共和国国立ドンカ病院の協力の下、EVD疑い例の内、発熱、下痢、出血傾向等の初期症状があり、PCR検査陰性であった症例をEVD疑似症例(79例)として選出した。患者血清より抽出されたRNA試料について、アルボウイルス(黄熱、デング、チクングニヤ等)、ラッサウイルス、麻疹ウイルスおよびマラリアを検出対象としたリアルタイムPCRスクリーニングを行った。またより広範なウイルスを検出するため、科または属レベルで検出可能なプライマーセットによるPCRスクリーニングを行った。その結果、デングウイルス1型(11例)、麻疹ウイルス(1例)、マラリア(14例)にてPCR陽性が検出された。検出された麻疹ウイルスについて分子系統解析を行い、西アフリカ地域にて広く分布する遺伝子型B3であることが分かった。デングウイルス1型についても引き続き分子系統解析を実施している。 西アフリカにおいてはこれらの感染症が常在している、もしくはEVDの流行と同時期に発生したことを示唆するものであり、流行時にはこれらの感染症患者が実際にEVD疑い例として扱われていたことが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
EVD流行時にリファレンスラボとして機能した国立ドンカ病院を訪問し、当初の計画通り対象症例を選出し、提供試料からの各種ウイルスの検出を行った。現地でのサンプル保管状況の都合、想定より少ない被検数となったが、EVD疑似症例に見られるウイルス感染症を特定し、その分子系統解析を行うことができたことから、概ね計画通りに進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きEVD疑似症例試料から病原ウイルスの検出を試みる。また、EVD確定例で特異的に観察される臨床所見を明らかにするため、EVD確定例と疑似症例における各症状の出現率の差異を統計的手法を用いて調べる。 初年度の結果より、EVD流行下においてエボラ疑い例の中にマラリア、麻疹、デング熱等の患者が混在していたと考えられる。そこで、これらの感染症とEVDとの同時鑑別診断法を確立するため、等温遺伝子増幅を原理とする病原体検出法を開発する。更に、EVD疑似症例由来の試料を用い、診断法としての有用性を評価する。
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