平成29年度は、調査対象ウイルスを追加し、発熱症状の原因となりうるウイルス(エンテロウイルス、ブニヤウイルス、風疹ウイルス等)についてPCRによるスクリーニング検出を行った。新たに7例のEVD擬似症例からエンテロウイルス(EV)を検出した。ウイルス種および遺伝子型を同定するため、PCR産物のシークエンス及び分子系統解析を行ったところ、今回検出したEVのうち6例がライノウイルスであり、1例がエンテロウイルスC、ヒトコクサッキーウイルスA13(CV-A13)であることを同定した。また、今回PCRによるスクリーニングにおいてウイルス陽性を示したサンプルについて、次世代シークエンサーによるRNA-Seq解析を実施し、MVおよびCV-A13の全ゲノム配列を決定した。前年度検出したデングウイルス1型についてはRNA-Seqにおいても配列確認ができなかった。 今回得られた結果は、西アフリカでは上記のウイルスによる感染症が発生していることを示すとともに、EVD流行時にはこれらのウイルスの感染例がEVD疑い例としてエボラ治療施設に収容されていたことを示す。EVD擬似症例がエボラウイルスに対して高い感染リスクに曝されていたことを示唆する。EVD対策において、麻疹をはじめとする他の発熱疾患とEVDとの鑑別診断の必要性が改めて示された。本研究期間内に、MVの迅速検出法として、LAMP法による遺伝子検出法の確立を試みた。過去に報告されたプライマーセットとポータブル型LAMP検出・増幅装置で今回同定したギニア株の検出を行ったが、十分な検出感度が得られなかった。鑑別診断法の開発が課題として残ったため、引き続き実施する。
|