研究実績の概要 |
口腔外科領域では、社会の高齢化のため、歯槽骨ならびに顎骨を喪失する患者が増加してきている。そのため、骨再生治療はより重要な課題になってきている。現在は、新鮮自家骨移植が最も有効で、申請者もその有用性を報告してきた(K Miura, et al.2015)。しかし、外科的侵襲、骨の採取量の限界があることから、自家骨に匹敵する人工骨再生材料の開発が望まれてきた。我々は、骨形成性プラスミドベクター(pMP4, pRunx2)を搭載したアテロコラーゲンによる遺伝子活性化基質(Gene Activated Matrix: GAM)を含浸したβ-Tricalcium Phosphate(β-TCP)を用い、骨再生能を証明した(M Umebayashi, et al. 2015)。しかし大量のプラスミドDNAが必要になることが欠点であった。本研究は、低用量非ウィルス性ベクターを保持した新規バイオマテリアルの開発を目的に、①ナノバイオグラスを用いてDNAの細胞貪食能を高めプラスミドDNAの遺伝子導入効率化を図り、②担体として用いていたアテロコラーゲンを低接着性コラーゲンLasCol(Low Adhesive Scaffold Collagen)に置換し、細胞のスフェロイド(凝集塊)形成の誘導作用ならびに骨髄間葉系細胞の骨芽細胞への分化促進作用を強化し、従来のGAMをさらに改良し臨床応用を目指すことであった。プラスミドDNA、ナノバイオグラス、LasColの濃度を調節し、骨形成能が最も高い組み合わせを選定するためにマウス頭蓋冠上への移植実験を行った。その結果、アテロコラーゲン群と比較すると、有意差は認めなかったものの、優れた骨形成能を示した。
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