本研究は、提供型生殖補助医療・代理懐胎の当事者(生殖補助医療子、被提供者、提供者、代理懐胎者)間における非匿名化および面会交流について、既にこれらを実現させているニュージーランド(以下、NZという)の実際および法制度を検証し、日本における生殖補助医療当事者間の非匿名化および面会交流に関する権利保障制度の在り方を検討するものである。 平成28年度は、出自を知る権利および面会交流の法的性質について、国内における文献調査、理論研究を行うとともに、次年度の現地調査に向けて予備調査を行った。平成29年度は、NZにおいて、研究者・実務家を対象にインタビュー調査を実施し、生殖補助医療関係当事者間の情報アクセス(以下、情報アクセス権という)および代理懐胎に係わる法制度とその実態等について情報提供を受けた。平成30年度は、前年度の調査結果をふまえ、NZにおける情報アクセス権の萌芽となった同国の養子縁組法制について追加研究を行った。また、日本の生殖補助医療における子の出自を知る権利および情報アクセス権の可能性を探るため、日本の養子縁組制度の実態について研究した。なお、平成28~30年度の研究成果は、公開研究会、マスメディア等を通じて広く社会に発信した。その結果、他分野の専門家から、ジェンダーの問題にも配慮した法政策の検討が必要であるとの指摘等があり、さらに、NZにおいて法改正の動きが報道されたことから、研究期間を延長した。 最終年度(令和元年度)は、生殖補助医療当事者間の情報アクセス権と面会交流および法的親子関係の確立に関する立法が与えうるジェンダー問題への影響等を中心に追加研究を行った。とりわけ、子の養育(親権・面会交流・扶養)に関する問題に着目し、日本とNZの相違について研究を深めた。これらの研究成果については、論文、研究会および講演会、マスメディア等を通じて報告・公表した。
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