平成30年度は、平成29年度に引き続き、食道癌患者への化学療法実施後の悪心・嘔吐(CINV)の発現の新規バイオマーカー候補物質となるnesfatin-1の血中濃度測定を行った。シスプラチンと5-FUによる化学療法実施後の食道癌患者の血液を20症例分採取し(化学療法実施前、実施後1日目、3日目、7日目の計4ポイント)、ghrelin、leptin、motilin、 Neuropeptide Y、somatostatin、substance P、CGRP、VIP、nesfatinl-1を酵素免疫測定法にて測定を行った。その結果、Neuropeptide Y濃度が化学療法実施後上昇しており、CINVとの発現と良い相関を示していた。一方、carboxyesterase活性の評価として、本酵素の基質であるghrelinおよびdesacyl-ghrelin濃度を利用した。血漿中ghrelin/desacyl-ghrelin濃度比は化学療法実施後減少しており、抗がん剤によりcarboxyesterase活性が低下し、ghrelinの血漿中濃度が減少し、CINVが発生した可能性が考えらえれた。血漿中nesfatin-1濃度は血漿中motilin濃度の挙動と良い相関を示したが、有意な変化は認められなかった。化学療法によるCINVの発生には、Neuropeptide Yおよびghrelin濃度の変動が関与しており、特に抗がん剤によるcarboxyesterase活性の変化が影響している可能性が示唆された。
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