研究課題
近年、癌抑制遺伝子であるΔNp63が、器官発生に必須である上皮間葉転換(epithelial-to-mesenchymal transition: EMT)と関連していることが報告され、EMTが誘導された細胞は癌の浸潤・転移に関与していることが示唆されている。われわれは現在までにΔNp63が発現に関与しているmicroRNAについて複数着目し、その中でもmiR205がΔNp63の下流でEMT関連因子であるZEBの発現を負にコントロールしていることを明らかにし、誌上投稿中である。具体的にはmiR205のin vitroにおけるmicroRNA発現定量解析の結果、miR205の過剰発現ではEMT関連遺伝子の発現が減弱し、miR205インヒビターを用いるとEMT関連遺伝子の発現が亢進した。タンパクレベルでも同様の結果となった。また、microRNA インヒビターを用いて活性を阻害し、増殖、遊走、浸潤能への影響を検討した結果、EMT様の変化を認めた。これにより前回2014年にClin Exp Metastasis誌に報告した、ΔNp63の発現減弱が、EMTを誘導するメカニズムの一端が解明された。今後は実験計画の中期目標である、miR205を用いたin vivoにおける転移実験を行い、microRNAによる転移抑制効果を確認。microRNA発現制御による各種抗癌剤の効果についての検討を同時に行なっていく予定である。また、mature microRNAについて相補的なDNA/LNA オリゴを用いてin situ hybridizationは未実施であり今後の課題である。
2: おおむね順調に進展している
計画2年目の機能実験はほぼ完了しており、現在誌上投稿中である。
口腔扁平上皮癌細胞でありΔNp63を発現しない、SQUU-BとΔNp63を過剰発現させたSQUU-BO細胞に対し目的microRNAであるmiR205の発現制御を行い、頭頸部扁平上皮癌の治療において一般的に使用されている5-FU、シスプラチン、ドセタキセル、パクリタキセルなどの抗癌剤に対する耐性について検討を行う。同様にSQUU-BとSQUU-BO細胞に対し目的microRNAの発現制御を行い、造腫瘍能および転移能について、CAnN.Cg-Foxn1nu/CrlCrlj マウス(BALB/c ヌードマウス)に上述の細胞を同所性移植し腫瘍形成の有無を検索、原発巣および転移リンパ節の切除標本を作製する。いずれの細胞においても蛍光タンパク発現ベクターを導入し頸部、肺への転移を可視化する。
年度末の学会参加が予想されたため助成金の一部を残していたが、参加を見送ったためその分の助成金に残額が生じたため。
細胞培養用の消耗品、器材を購入予定である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) 備考 (1件)
World Journal of Surgical Oncology
巻: 14 ページ: 161
10.1186/s12957-016-0918-1
日本口腔腫瘍学会誌
巻: 28 ページ: 293-298
10.5843/jsot.28.293
http://ris.kuas.kagoshima-u.ac.jp/search?m=home&l=ja