脳内の神経回路によって形成されると考えられている「食べたい」という欲望は、昨今の肥満関連病態についての理解が深まるとともに多くの研究者からの注目を受けているが、具体的な担当神経回路や欲望発生メカニズムについては今後更なる理解が必要である。代表者は、これまでに味覚や内臓感覚の情報を統合する脳領域である島皮質に着目し、その食欲形成への関与について調べてきた。 本研究の目標は、代表者がこれまで明らかにしてきた島皮質の神経活動の餌予測行動表出に対する影響について、島皮質内外での神経回路メカニズムの解明である。自身が行ってきたこれまでの研究では、オペラント学習を行わせ、餌を予測させる感覚刺激に対して動物が予測行動反応を示すことを指標として、マウスの食欲を評価してきた。このタスクでの餌予測行動の観察は、再現性には優れているものの、予測行動表出時間が10秒ほどと短く、最初期遺伝子等を用いた関連領域の同定作業には向かないという問題点があった。そこで、本研究では、長時間にわたって餌予測行動の表出を促すことのできる間欠的給餌法を用いて餌予測行動を観察することで島皮質内の担当領域同定を目標にすることにした。島皮質の全領域を前後方向に前部、中部、後部に分け、それぞれのc-fos発現細胞数を調べたところ、どの領域でも、餌予測行動群についてc-fos発現細胞数の増加が観察された。また、島皮質からの投射先の1つとして、視床下部領域に着目し、島皮質由来の軸索刺激を行う実験も試みた。
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