研究課題/領域番号 |
16K21248
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
白田 理人 琉球大学, 国際沖縄研究所, JSPS特別研究員(PD) (60773306)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 危機言語・方言 / 琉球諸語 / 喜界島 / 談話資料 / 地域変種 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、喜界島(鹿児島県大島郡喜界町)の複数地点の談話資料を収集(録音/録画)し、これを研究者および地域コミュニティが学術研究及び方言の継承活動に利用できる形でアーカイブ化、公開することと、談話資料の分析による知見を踏まえて、喜界島方言の形態統語面(格標示、人称代名詞、文末助詞など)の方言差を明らかにすることの2点である。 2年度目にあたる平成29年度は、以上の目的のために、(1)喜界島の形態統語面における方言差の質問調査(共通語から方言への翻訳調査)を行い、(2)言語資料を円滑に作成するためのツールの実用化に取り組んだ。 (1)について、人称詞/疑問詞/指示詞を中心に調査・分析を行った。特に指示詞の方言差については、喜界島祖語に溯るhuri/ari/uriの三系列を保持している方言(例 上嘉鉄集落)とhuri/ariまたはuri/ariの二系列へと変化しさらに人称代名詞との複合形を発展させた方言(例 小野津集落、荒木集落)、及びこれらの中間段階の方言(例 佐手久集落)があることを報告した。また、以上により、平成30年度において調査研究とする方言差の一部を洗い出し、方言差を観察するための談話資料収集の準備を整えた。 (2)に関して、平成28年度にコア部分を作成していたツール(テキストの形態素分析及び意味注釈付与を半自動的に生成するためのツール)に実装化のための機能を追加した。以上により、平成30年度においてさらに機能を追加して多目的に利用可能な言語資料作成に活用するための準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が概ね順調に進展していると判断した根拠は、以下の通りである。 (1) 本研究の目的である形態統語面における方言差の調査研究について、質問調査を行いその一部について成果報告に至ったため。 (2) (1)により、本研究の主眼である談話資料収集・分析に際してターゲットとなる項目の洗い出しを行えたため。 (3) 前年度に引き続き、談話資料を多目的に利用可能にする形態素分析・意味注釈付与の作業を円滑に行うためのツールの実用化を進めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策は以下4点である。 (1) 談話資料の収集調査及び書き起こし調査を行う。収集調査に際してはロールプレイ等を利用して、形態統語的特徴のうち方言差のある項目が観察可能となるようにする。書き起こし調査について、録音した音声を話者とともに聞きながら発話と意味の確認作業を行う。 (2) 収集した談話から得られた知見を踏まえ、質問調査を行い、形態統語面(人称代名詞体系、指示詞体系、格助詞、文末助詞)の方言差を明らかにする。特に、談話資料だけでは特定の形式/構文が(特定の文脈で)当該方言において用いられないという否定的な証拠は得られないため、質問調査で確認する。 (3) 引き続き、形態素分析・意味注釈付与のためのツールを整備し、言語資料の作成の円滑化を図る。特に、ツールの辞書部門を整備する。 (4) (1)で収集した談話資料をもとに、(3)で作成したツールを活用して言語資料の形にまとめ、出版、公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画より形態素分析・意味注釈付与のためのツールに必要な経費が多く見込まれることが分かった。よって、次年度の調査及び成果報告のための旅費として必要な費用を確保するために繰越をおこなった。
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