本研究の目的は、患者を必要に応じて高機能病院に受け渡す、かかりつけ医のような仲介機能を含む医療市場の組織構造を明らかにすることである。そして、効率的な医療市場を設計するためのインプリケーションを導出することを目指す。 本年度はこれまでの研究を継続し発展させた。まず、医療市場の現状整理から日本の医療費増大の要因に関する調査を行った。日本の対GDPではかった医療費は2015年に11.2%とOECD諸国平均の9.0%と比べて高くなっている。このように日本の医療費が高い要因を高齢化、所得、疾病構造、医療技術の進歩と普及、供給者誘発需要の観点から考察した。考察の結果、日本の医療費増加はこれらの様々な要因が複雑に絡まっていることが明らかになった。また、かかりつけ医の機能や役割に関する調査をし、かかりつけ医の機能である診察、予防医療、紹介についての研究を整理した。これらの結果をコラムとして書籍に掲載した。 また、医療機関の財務データを用いて、病院の効率的な経営に影響する要因について調査した。その結果、高い病院の効率性と関係する要因として経営が規定に基づいて行われていることが明らかとなった。その一方、病床管理や在庫管理に力をいれることが低い効率性に関わっていることを明らかにし、これらの結果をもとに論文を執筆し学術雑誌に掲載した。 医療市場におけるかかりつけ医は患者と専門医療機関の仲介を行うことから二面的市場の分析と関連している。かかりつけ医を含む医療市場のモデル分析を行い、病院間の紹介とかかりつけ医の関係を明らかにした。また、医療市場のモデル化の基盤となる二面的市場の仲介業者のモデル分析を行った。仲介業者の水平的差別化競争の結果をもとに論文を執筆した。
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