中国清朝初期(康熙年間ぐらいまで)の満洲族における漢語理解および漢文化の受容の様相を明らかにすべく、漢語文芸作品の満洲語訳に焦点を当て、満漢翻訳の技能や方針の検討、テキストクリティークの作業を行った。文芸作品の満洲語訳については、早田輝洋氏による『満文金瓶梅』の全面的な研究を除いては、その数が多かったことが指摘されている以外、あまり積極的に検討されてきたとは言えない。本研究では、『金瓶梅』については、複数の翻訳者が共同作業を行っていた可能性を指摘し、底本特定に近づくための新たな証拠を提出した。『西廂記』については複数ある版本の整理と書誌の報告、関連作品の特徴を明らかにした。
|