コンクリート構造物で,火災などにより熱の影響を最も受ける部分は,受熱部である部材の表層部だが,その表層部には設備機器の取付けや耐震補強などの用途のために,あと施工アンカーボルト(以下,アンカー)が用いられている場合が少なくない。前述のとおり,コンクリートは熱の影響を受けると強度特性などの性質が変化するため,表層部に施工されているあと施工アンカーの引抜き特性も変化することが予想される。 あと施工アンカーに関しては,工法,種類が多様であり設計指針も刊行されており,熱に関する検討も若干ではあるがなされている。しかし,あと施工アンカーの引抜き特性と高温加熱の影響に関する知見が不足しており,今後,利用の拡大が想定されるあと施工アンカーの耐熱性評価のためには,知見の蓄積が必要である。 本研究では,あと施工アンカーが部材表層に施工されたコンクリート構造物が、800℃までの高温加熱の影響を受けた際のアンカーの引抜き特性を明らかにすることを目的とし,高温加熱の影響を受けたアンカー供試体の引抜き試験を行った。その結果,最大荷重は,加熱温度100℃までは有機系接着剤を用いたアンカー(以下,有機系)が最も大きく,無機系接着剤を用いたアンカー(以下,無機系),コンクリート打込み時に鉄筋が予め埋設されたもの(以下,先付)となり,150~230℃で有機系,先付,無機系となり,250℃で先付,有機系,無機系の順となった。そして,300℃以降は先付,無機系,有機系と,加熱温度によって,最大荷重の大小関係が異なった。なお,本検討では,有機系が250℃,無機系が150℃で最大荷重が大きく低下した。
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