研究課題/領域番号 |
16K21268
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
栗原 裕司 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 特任助教 (00634552)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 神経科学 / 薬理学 / 神経疾患 / 受容体制御 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー病の認知・記憶機能障害の原因分子として知られるamyloid β(Aβ)重合体が結合する新規受容体としてpaired immunoglobulin-like receptor B(PirB)を特異的かつ効果的に機能制御する手法の開発を目的とした。 本研究申請前に研究代表者は、神経再生を妨害する因子の受容体として知られるNogo receptor-1の内在性アンタゴニストとして自身らが同定したlateral olfactory tract usher substance(LOTUS)がPirBと相互作用することを見出している。 本年度は、LOTUS結合が、Aβ重合体を受容するPirBの分子機能に及ぼす影響について検討した。Aβ重合体のPirBへの結合に対するLOTUSの影響を調べたところ、PirB単独を強制発現させたCOS7細胞にAβ重合体は結合するが、LOTUSおよびPirBの両者を強制発現させたCOS7細胞ではAβ重合体の結合が抑制されることが明らかとなった。また一方で、PirBを強制発現させたCOS7細胞に対するAβ重合体の結合が、研究代表者が所属する研究室所有の抗PirB抗体の添加により抑制されることも見出した。これらの成果は、LOTUSあるいは抗PirB抗体がAβ重合体により誘起されるPirBの機能を阻害する可能性を示唆する。Aβ重合体-PirB結合はリン酸化Cofilinおよびpostsynaptic density protein 95(PSD-95)の減少を媒介することによって、アルツハイマー病の認知記憶機能障害を誘起することが報告されている。Aβ重合体結合によるPirBのシグナル伝達経路に対する抑制効果を検証するための前段階として、このシグナル伝達経路の検討に用いられるマウス培養大脳皮質神経細胞におけるリン酸化CofilinおよびPSD-95の発現を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画に記した、Aβ重合体のPirB結合に対するLOTUSあるいは抗PirB抗体の抑制効果における解析のほぼ全容が終了したことが理由として挙げられる。また、Aβ重合体結合によるPirBのシグナル伝達経路に関与するリン酸化CofilinおよびPSD-95の発現を確認したことも挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、Aβ重合体によるマウス培養大脳皮質神経細胞のリン酸化Cofilin減少およびPSD-95減少に対するLOTUSあるいは抗PirB抗体の抑制効果についての検証実験を継続する。また、アルツハイマー病モデルマウスの認知記憶機能障害に対するLOTUSあるいは抗PirB抗体のレスキュー効果を検証する。
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